放送局も自ら視聴データの収集を開始
テレビメディアも、データの絶対量がビジネス規模を決めることを認識しており、テレビ局自ら視聴データの収集を開始しています。テレビ局が収集できる視聴データは、テレビ機器メーカーが集めている視聴ログよりも数倍多く、ビジネス規模も数倍大きくなることが想定されます。

自局の視聴データをベースにしたDMPを構築し、番組視聴者(=顧客)に対して広告配信などを行うというのが想定されているビジネスモデルです。これにより、テレビ局は、テレビCMだけでなく自局視聴者へのデジタル広告もメニューに加えることができます。※1
日本は商習慣上、大手広告代理店への依存度が高いですが、海外では大手広告主はエージェンシー機能をインハウス化し、自らディレクションを行う体制の構築が進んでいます。今後日本でも、メディア側であるテレビ局によるオーディエンスデータの整備と広告主側のインハウス化が進めば、テレビ局と大手広告主が直接やりとりする時代がくるのではないでしょうか。
※1 SARC「オプトアウト方式で取得する非特定視聴履歴の取扱いに関するプラクティス(ver1.0)」
データ活用は外的要因で環境変化が起こりやすい
テレビ視聴データとしての実数型データ活用の流れにも、不確実性が存在します。デジタル広告は、データを活用して成長しましたが、今はGDPRを発端とする個人情報保護の流れから、データのメディアでの囲い込みが起きています。テレビはようやく実数型データ(視聴ログデータ)の活用が進み始めたところですが、デジタルメディアでのデータ保護姿勢強化の影響は間違いなく受けます。
テレビメディアは、自局の収入を増やすためのマーケティング活用といった利己的な指向だけでなく、テレビメディア全体の成長を考え他のテレビ局とも連携し、視聴者へ「自分の視聴データを提供することでどんなメリットが受けられるか」を提示する必要があります。視聴者としっかり合意形成をしながら、個人情報保護と自由な利活用のバランスを取り、テレビのデータ活用を進めていけば、テレビは今と変わらずNo.1のメディアであり続けることができるのではないでしょうか。
