組織の成長と「人」の関係を実感
――これまでのキャリアを振り返って、ターニングポイントだと感じたことは?
まだまだ振り返るほど長くもないキャリアですが、マルケトに入社したときです。今後も様々な経験をしていくと思いますが、ビジネス人生を振り返るときには、絶対にこれがターニングポイントであり、自分のハイライトだと思える日々を過ごしました。すぐ隣で、一流のグローバルリーダーが何を考え、どんな思考でビジネスを回しているのかを、つぶさに観察させていただけました。20代後半という時期を、そんな環境で過ごせたことは、本当に良かったと思いますね。それまでの私は、「チームが勝つのも自分一人が頑張ればいい」と考え、チームワークをあまり気にしない嫌なヤツでした(笑)。しかし、マルケトで働く中で、自分が考えもしないところにゴールを置き、みんなでそこを目指し、達成するという経験をしたのです。「早く行くなら一人で行け、遠くへ行くならみんなで行け」という、アフリカの有名なことわざがありますが、一人では成し遂げられないことがあり、それをメンバー全員で達成したときの高揚感は今までに感じたことのないくらい大きなものでした。
――どんなことに、影響を受けたのでしょう。
あまりにも多くの影響を受けたのですが、今も自分が働く上で指針としているのは、組織を成長させる上でどのように人と向き合うかということです。組織やオペレーションをデザインしていく際には、できる限り感情論は抜きにしてロジカルに構築することを考えていきます。そのオペレーションに対して、メンバーはどうしたら100%以上のパフォーマンスを発揮できるのかを一人一人と向き合って思考する。無駄のないオペレーションを構築することではじめて「業務」ではなく「人」に十分に時間をかけられるようになるのです。このような、人と仕組み、パッションとロジカル、量と質、定性と定量など二者択一の正解がない課題を行ったり来たりしながら、意思決定をするプロセスを知ることができたのは自分の財産になっていると思います。
――マルケトでの経験が、弘中さんを作ったと言っても過言ではないのですね。
マルケトを退職するときに、お客様から「弘中さんがいたから、マルケトが好きになれました」と言っていただけて、心の底から嬉しかったです。仕事をしていると、自分は本当にお客様の役に立っているのだろうかという葛藤が常にあるんです。担当するお客様から、「売上が上がった」とご報告をいただいても、「自分が担当していたから、上がったのだろうか。他の人でも、同じ結果だったのではないだろうか?」と、自分がこのお客様に関わったことでお客様は幸せになったのだろうかと常に問いかけています。そのような中で上記のようなお言葉をいただけたのはすごく嬉しかったです。また、マルケトのユーザーコミュニティの形成には、多少貢献できたかなと感じています。「マルケトには、良いコミュニティがありますね」と言われるのは、退職した今でも嬉しいです。人を結びつけ、新しい化学反応を起こすという介在価値を果たせたんじゃないかなと感じています。
新しい世界へ飛び込み、経験を買う
――仕事では、どんなことを大切にしていますか。

経験を積み上げることです。転職するにしても、同じ会社の中で仕事をするにしても、これまで経験のないことへ飛び込むことを意識しています。キャリアアップというとポジションや年収を上げることをイメージされがちですが、「自分の経験値」を上げて社会に貢献できる領域を広げることこそが唯一のキャリアアップというのではないかと考えています。また、対人関係ではコミュニケーションコストを下げて、対話をスムーズにすることも心がけています。なぜなら、コミュニケーションコストが高い人には、情報が集まってきませんし、相談しづらいものです。すると、特定の人からの話や限定された話しか知らず、意思決定を間違えてしまう可能性があります。私はそのような状態を怖いと感じますし、組織を良くしていくことにつながりません。みんなと話したいし、話しかけられて、みんなで組織を良くしていきたいです。スーツを着ずにTシャツとパーカーで「気軽に話しましょう」という雰囲気が出せるように努めています(笑)。
――最後に、今後の展望を教えてください。
今は、目指したい社会(=今はまったく想像もしていない“移動”が普及している社会)に貢献できることへ取り組みたいという気持ちがあります。自分が心から納得できる事業・信頼の置けるメンバーと一緒に会社を成長させて、社会をアップデートしていく。そして、数十年後にみんなで最高の景色を見られたらと思います。これまで明確なキャリアプランを考えたことはありません。キャリアは自分の前にあるものではなく、今まで積み上げてきた“自分の生き方・信念・思考”そのものが、キャリアだと考えています。ですから仕事内容は問わず、関わる会社が成長をする上でレバーとなるポイントや、自分が貢献できることに向き合いたいと考えています。
関心や興味のベクトルは、自分ではなく外へ向かっていますね。これから新しく登場するテクノロジーと、社会がどのようにミックスされるのか。そのミックスされる過程で、1番大きなボトルネックを解決する仕事や会社に関わりたいです。未来の社会がある存在理由に、自分たちの仕事が一翼を担っていると感じられるような場所で、信頼できるメンバーと一緒にこれからも仕事をしていきたいと思います。