※本記事は、2019年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』44号に掲載したものです。
Facebookが狙う「重いデータ」
「広告収益」というマーケティング・インフラの収益に依存していたFacebookが、2020年に仮想通貨(暗号資産)「Libra(リブラ)」という金融インフラを提供することを発表し、衝撃が走った。Facebookによるリブラの取り組みとは、マーケティング上に閉じた「軽いデータ」から、生活インフラに関わる「重いデータ」へのシフトを意味する現象であり、「不可逆(後ろ戻りできない)のトレンド」として経済重要度の高い出来事だ。
「軽い(価値の低い)データ」とは、ビッグデータの号令とともに大半は本人の同意のないまま集められたデータを指す。たとえば「視聴データ」「閲覧履歴」「購買記録」「位置情報」等の、マーケティング業界に散見される既存データとしてたとえた。
これらに対して「重い(価値の高い)データ」とは、「個人の生命や金融決済に直結するデータ」を指す。これらは本人の利用目的に関する許可が絶対に必要なのは明らかだ。たとえば本人を特定する「顔認証」「血液データ」「DNAデータ」等や健康状況を示す生体認証データもそれらに含まれる。あるいは個人または法人の「資産を管理する金融データ」を含み、単なる決済のトランザクション・データの領域を超える。
さらにこれらの「重いデータ」をつなげるパイプとして、「5G」に代表される「通信インフラ」の重要性が高まる。今回のFacebookによるリブラ構想は、Facebookが既に手にしている「マーケティング・データ」だけでなく、「生活サービス・インフラ」の共有とパイプ接続に向けて、満を持して動き出したのだ。