Hondaやレッドブルも実践
――「タイアップ2.0」に近い取り組みとして、高野さんが注目している例を教えていただけますか。
高野:たとえば「Honda(本田技研工業)とONE OK ROCK」のコラボは良い事例です。音楽をテレビCMに用いて、映像にアーティストを登場させただけではなく、ONE OK ROCKファンの“トライブ”に対して、アーティストの持つ“世界観”とHondaが伝えたいメッセージをうまく融和させた展開を行うことで、ブランドイメージを醸成しています。
高野:また一風変わったコラボとして、スマホ決済サービス「Origami Pay(オリガミペイ)」の決済音をロックバンドのサカナクションが手掛けたという例もあります。アーティストと二人三脚となって、ブランドイメージの醸成を手掛けている興味深いケースです。
このような取り組みはもっと増えて良いと思いますし、工夫次第でまだまだ活用の余地があるはず。企業が既にもっている固有の音を活かすためにアーティストと組む、という方法もあるでしょう。
――様々な企業が、音楽やエンタメを通じた可処分精神の転化を試みているのですね。
高野:はい。さらに言えば、タッグを組むのはアーティストに限らなくても良いのです。
たとえばエナジードリンクのレッドブルは、ずっとエクストリームスポーツを中心にエンタメに寄り添っていますよね。その企業姿勢やプロダクトの背景を含めて、エクストリームスポーツと親和性が高い。ファンの納得感を生み出し、継続性もある、良い事例です。
音楽やエンタメが獲得している可処分精神をブランドへと完全に転化させるのは難しいと思いますが、ブランドのほうへ少しずつ移動してもらうことはできるのではないでしょうか。
音楽マーケティングを当たり前の選択肢に
――高野さんご自身は、「Modern Age/モダンエイジ」において今後どのような取り組みを展開していきたいですか。
高野:「音楽やエンタメはブランドを形成する同志である」という理解を広げていきたいですね。
これまでブランドのマーケティングの文脈で「音楽」と言うと、プロモーションの一要素という認識が強かったと思います。そうではなく、SNSマーケティングやダイレクトマーケティングなど数あるマーケティング手法の一つとして、「音楽マーケティング」が選択肢の中に入るような未来を作っていきたいのです。
それが当たり前になることで、企業と音楽を保有するアーティストの双方にとって高い価値が生まれていくでしょう。
「Modern Age/モダンエイジ」には、ブランドマーケティングとエンタメマーケティング、両方の専門スタッフがそろっているのが強みです。これまでも、文化や慣習が違う2つの業界の橋渡し役として、どちらにとっても「実施して良かった」という取り組みとなるよう、お手伝いをしてきました。今後も音楽やエンタメのもつ可能性を追求しながら、マーケターの皆さんにその価値を伝え続けていきたいです。