近代マーケティングの父・コトラー博士が2年ぶりに来日
World Marketing Summitは、2010年にコトラー教授によって設立されたマーケティングカンファレンスである。今年は東京のほか、16ヵ国で開催される予定だが、その日程は88歳でなくてもかなりハードである。コトラー博士は、10月6日にミャンマー、10月7日にタイ、10月9日に日本、11月15日にカナダ、11月18日にイギリス、11月22日にイタリア、11月25日にトルコ、12月9日に南アフリカ、12月10日にナイジェリア、12月12日にベトナム、2月15日にマレーシア、2月22日にフィリピン、2月25日にパキスタン、2月29日にインド、3月3日にバングラデシュ、3月5日にインドネシア、3月15日にアラブ首長国連邦と、およそ半年に亘り世界各地に赴き、講演を行う予定だ。
筆者は10月8日に行われたレセプションパーティーと、9日のWMS2019、10日のコトラーアワードと延べ3日間、コトラー博士の活躍を目にすることができた。
今回は幸運なことに、約7分に亘りレセプションディナーの中でコトラー博士の単独インタビューを実施することができた。こちらの内容も後日記事にする予定だが、今回はWMS2019でコトラー博士が語った内容について、いくつかのトピックスを紹介したい。
GDPに加えて「人間の幸福度」や「地球環境の健全さ」が経済指標に
WMS2019の冒頭、コトラー博士は「“理想の社会(Ideal Society)”とは何か」という問いを会場に投げかけた。博士は理想の社会を「飢えや極端な貧困がなく、衛生的な水と環境が用意されており、良い住居と近所があり、教育と医療が無償で提供されること」と位置づけ、そうした社会では“GDP以外の経済指標”が必要であると説いた。なぜなら、GDPは人類や地球に良くないもの(武器など)を生産消費しても上昇するからである。
博士は利益の指標であるGDPに加えて、「人間の幸福度(People Betterment)」を測るGNP(Gross National Happiness)やGNW(Gross National Well-being)、「地球環境の健全さ(Planet Betterment)」を測る指標を定めるべきと主張した。これらの指標を達成するには、「Common Good (すべての人にとって利益になること)」を行わなければならない。