※本記事は、2019年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』46号に掲載したものです。
ARはその場をさらに良くするスパイス
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株式会社電通ライブ クリエーティブユニット チーフプランナー 尾崎賢司(おざき けんじ)氏
2010年電通入社。2017年電通ライブ出向。入社以来、イベント&スペース領域の企画・制作を担当。ウェブやアプリの制作、キャンペーン設計の経験を経て、現在は事業開発やサービス開発など担当領域を広げて活動中。株式会社電通ライブ プランナー/プロデューサー 松本健佑(まつもと けんすけ)氏
2015年電通入社、2017年から電通ライブに出向中。主に国内外のプロモーション案件の企画・制作に従事。近年では、主に東京2020オリンピック・パラリンピック案件を担当する傍ら、テレビ番組の企画・制作、企業の新規事業立案などにも携わる。グッドデザイン賞、ACC賞、空間デザインアワード等の受賞歴を持つ。
――電通ライブは電通グループの中でもイベントや空間設計などリアルな場の企画・演出を得意とし、特化してきたと思います。その中でなぜVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)のような最新テクノロジーの活用にも注力するようになっているのか教えてください。
松本:電通グループとして、新聞やテレビ以外の広告表現の場や方法も大事だという考えはずっと昔からありました。VRやARも、その表現手段の一つとして捉えています。
その中で、イベントや空間を手掛けることが多い電通ライブではARに対して特に注力し、バスキュールさんと「音声AR」というシステム開発・提供を行っています。そこに至ったのは、「Augmented=拡張」という言葉のとおり、現実世界にプラスすることでより充実した体験を提供できる技術とイベントや空間の相性が良いと考えたからです。その場をもうちょっと良くするスパイスとして電通ライブの事業と親和性が高いこともあり、複数の実績を積むことができていると思います。
尾崎:当社は、大小合わせて年間約5,000件のプロジェクトを手掛けています。最近、特にデジタル技術の活用に軸足を移しているというよりは、空間や体験の感動を増幅させる手法の一つとしてARなどのテクノロジーを使った事例も増えている、という状況ですね。
――VRやARについて、企業からの関心の声は高まっていますか。
尾崎:感覚的にですが、「VRやARで何かできないか」という問い合わせは減っています。これらはもう「使いました!」と謳って注目される時期は過ぎているので、本来のあるべき姿である課題ファーストで導入する考え方に戻ってきています。
こうした新しい仕組みは大体、出始めの頃は技術ファーストの企画が登場して注目されますが、一定期間を過ぎるとそもそもの課題や伝えたいことを起点にフラットな状態で吟味され、適していたら選ばれるというフェーズに入っていきます。VRやARも基本的にはそういった位置づけになりつつありますね。
ただ、ARはもう一度、改めて波が来るかもしれないとも感じています。現状ではアプリを入れる必要があるなど、まだ少し敷居が高いですが、たとえばGoogleレンズ(カメラをかざすとその場の画像情報から検索やテキスト化などを行う画像認識機能)がどの端末にも標準搭載されるといった動きがあれば、企業、クリエイター、ユーザーのいずれにとっても使いやすくなりそうです。