アスリートの企業に対する意識も変化
MZ:アスリート側の調査結果からはどんなことがわかりましたか。
関井:アスリートにとっても、Instagramが特別な場所になっていることですね。「週に1回以上利用している」と回答したアスリートが63%いて、かつ「Instagramが競技のパフォーマンスに好影響を与えている」と74%のアスリートが回答しています。
その理由を探っていくと、「応援してもらえる」「企業からの支援が得られやすくなる」という2大要因があることが明らかになりました。
1つ目については、Instagramに投稿することで、応援のコメントなどをもらうようになり、それが日々のトレーニングのモチベーションにつながっているということです。
2つ目に関しては、パーソナリティーを出していくことで、Instagramを見たメディアから取材依頼が来たり、企業がスポンサーとして付いてくれたりと、経済的なサポートが受けられるケースが増えているようです。それによって、パフォーマンスを上げやすい環境を作ることができています。
調査協力をしてもらったアスリートの中には、これからが期待される若い選手の方もいましたが、その人たちからはパフォーマンスを伸ばす上で「経済的に苦労している」との回答がありました。遠征費や生活費を稼ぐために練習以外の時間は副業に取り組む人も少なくなかった。そうした中で、Instagramはアスリートとファン、スポンサー、メディアをつなぐプラットフォームとなっているのです。
水谷:従来であれば、選手は活躍してメディアに出て、ファンが付いてスポンサーの支援が入る、というサイクルが一般的でした。しかし、そこにInstagramが入ることでパフォーマンスだけでなく個性を軸にした露出ができるようになり、ファンとの接点が作れるようになりました。
また、画像が中心のプラットフォームなので、練習の合間にも投稿しやすいし、スポンサー企業のPRとの親和性も高い。スポンサー企業に貢献したいと考えている選手が多い中で、Instagramをその一つの手段として使いたいと思ってもらえる部分かと思います。
アスリートがもたらすPR効果とは
MZ:昨今、インフルエンサーを巻き込んだマーケティング手法も増えてきていると思いますが、アスリートによるPRはどの程度効果があるのでしょうか。
関井:調査によると、好きなアスリートに影響を受けて購買行動をとったInstagram利用者は6割もいます。さらに、なぜ購買に影響しうるのかを定性調査で深掘りしたところ、次の3つのポイントが浮き彫りになったんです。
1.アスリートの日常的な投稿によって刷り込まれる「想起性」
2.アスリートを支えるブランドに好感を持つ「意義性」
3.競技パフォーマンスを支える商品の機能による「差別性」
また、積極的に色々な人に投稿をリーチするためにハッシュタグを使ったり、好きなブランドを狙ってアプローチをかけたり、セルフブランディングも一貫性のある投稿を心がけていたりと、影響力のあるアスリートはマーケターに近い発想でInstagramを活用しています。
定性インタビューからは、「今まで競技のパフォーマンスを上げることだけ頑張っていたけど、それだけだとダメだと思うようになった」「今までより視野を広げてみたら、もっと色々な方法でパフォーマンスを高める環境が作れることがわかってきた」などのコメントもあり、アスリートの心境の変化を感じました。