もし誰も気づかなかったら……?
――「英語のような関西弁のラベル」に気づいた人が表れたのは発売からしばらくしてからです。仮に発見されることがなかったらどうされる予定だったのでしょうか?
原:特に何も予定していませんでした。企画の段階で、永遠に気づかれないかもしれない、とも考えました。皆さんのカバンの中や、洗面所からささやかなエールを送れたら、という想いから表記に至りましたので。
――メンズビオレブランドで「英語のような関西弁のラベル」を継続されていく予定はありますか?
原:今のところ、考えていません。また別の表現で、皆さんにくすっと笑ってもらえたり、ホッコリしてもらえるような施策はするかもしれません。
――「英語のような関西弁のラベル」のような温かみのあるメッセージに共感が集まる時代に、御社のような一般消費財メーカーは消費者に対してどうアプローチすべきだとお考えでしょうか?
原:我々、消費財メーカーは、人の生活や社会への貢献があって成り立っています。ただこれだけモノが飽和した今、役立つだけのモノでは貢献できない時代になっています。役立つだけでなく、どれだけ意味のあるモノ・ブランドをご提供できるかが重要なアプローチになってくると考えています。
――最後に、話題となる施策を仕掛けるためのアドバイスをお願いします。
原:ネットで話題を呼ぶために企てた施策ではないので偉そうなことは言えませんが、弊社では、「ブランドパーパス」=そのブランドが社会や生活に与えるインパクト、なんのためにそのブランドが存在するのか、ということを常に念頭においてブランディングをしています。
今回のケースでは、「頑張る男性たちにスキンケアを通じて、“心の余裕”を与えるメンズブランド」というのを基本骨格として設計していました。そうした土台がしっかりしているからこそ、担当者のアイデアを拡がり、世の皆様に良い評判を頂ける施策が実現したのだと理解しています。
――どうもありがとうございました。
SNSで話題喚起を狙った「企業の遊び心」をアピールした企業発信の情報などは、どうしても企業側の「売りたい」「買って欲しい」という下心が透けて見えてしまいます。逆に消費者サイドから発信された情報は、利害関係よりも単純に「おもしろい」といった角度からの情報になるので、拡散しやすい傾向にあると言われています。「英語のような関西弁のラベル」が仕込まれていた「メンズビオレSMART」も、まさに消費者発信の情報から話題となった商品です。遊び心は押し付けるものではなく、アンテナの高さが同じ人たちには自然と伝わるものだと考えることも大切ではないでしょうか。