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アドテック東京 2019

JAAが「アドバタイザー宣言」を発表 デジタル広告の負の側面に企業はどう向き合うべきか

「ブランドセーフティオフィサー」の確立

 3つ目に紹介するのは、アドテック2日目のキーノート「我々は明日から何をすべきか?-IAB Tech Labと語る、海外における広告品質のトレンドと日本の目指すべき未来」。非営利団体IAB(Interactive Advertising Bureau)のTec LabにてEVPを務めるバッカイム氏から、広告品質に関する海外のトレンドが語られ、後半はヤフーの井上氏とのディスカッションが設けられた。

(写真左より)ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長 井上大輔氏/IAB Tech Lab Executive Vice President , General Manager デニス・バッカイム氏
(写真左より)ヤフー マーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長 井上大輔氏
IAB Tech Lab Executive Vice President , General Manager デニス・バッカイム氏

 IAB Tec Labには現在、41ヵ国からデジタル広告にかかわる750以上の企業が加入。技術標準の開発や技術支援によって業界全体の持続可能な成長を目指している。「加えて、信頼の醸成にもフォーカスしている。広告主や広告会社、パブリッシャーなどの間で、強力な信頼の絆をどう築けるかは大きなチャレンジになっている」とバッカイム氏。

 今回のテーマは、IABがカバーする広告品質に関する複数の観点のうち、「ブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティ、プライバシー」の4つ。まずブランドセーフティとアドフラウドに関して、バッカイム氏は双方の関連性を提示した上で、「今まで以上にブランドが責任を持つことが重要になっている」と語る。今年、米国で18歳以上の2,010人を対象に実施された調査によると、90%のユーザーが「広告主は違法サイトへの広告掲出で『悪者』を支援しないよう注意すべき」と考えていることがわかった。

多くの生活者が、違法サイトに広告が出ないよう広告主が注意すべきと捉えている(※参照:)。
多くの生活者が、違法サイトに広告が出ないよう広告主が注意すべきと捉えている(当日の投影資料より/以下同)

 またIASの調査によると、65%のユーザーが「低品質なコンテンツ環境に表示された広告ブランドの使用を止める」と答えるなど、深刻な影響が出ていることがわかる。一方、同調査ではわずか37%のブランド責任者・マーケティング担当者しか「ブランドセーフティは自分たちの責任」と捉えていないことがわかった。

 「これは本来、100%であってほしいところ。反社会勢力への資金流入の問題から、世の中の関心も高まっている。この状況を重く受け止め、アドフラウド対策ツールやIASやMOATなどのパートナー企業の活用を検討すべき」(バッカイム氏)

低品質なコンテンツへの広告掲出は、ビジネスを大幅に左右することにもなりかねない(※参照:)。
低品質なコンテンツへの広告掲出は、ビジネスを大幅に左右することにもなりかねない

 さらにブランドセーフティに関するトレンドとしては、IABもボードメンバーに名を連ねる「Brand Safety Institute」が昨年立ち上げられたことも挙げられる。適切なツール開発や啓発活動に努めるほか、ブランドセーフティオフィサーの認証制度も設けて、その役割の進化もサポートしている。

相当なスピードで進むプライバシー保護の整備

 ビューアビリティに関しては、前述のパートナー企業と組むほか、IABが提供するアプリ向けのオープンソース「Open Measurement SDK」の活用も有効だ。現在、一定割合で無効のインプレッションを購入していることを考えると、ビューアブルな広告を選択的に購入することで、実質的に「有効なインプレッション」の単価の低下も望める。

 そしてプライバシーについて、バッカイム氏は「今、グローバルで非常に速いスピードで進化していて、感銘を覚えるほど」と言及。各国の政府が新たな規制を設けようとしている上、消費者の同意についてはCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)と同様、オプトアウト必須がトレンドだという

 「ブラウザ側の対策や、ツールの開発も進んでいる。状況をキャッチアップして、オーディエンスに最適な説明を常に模索することが必要」(バッカイム氏)

 最後に4つのテーマについて、明日から取り組めるアクションが提示された。

特に重要な4テーマに関するチェックポイント
特に重要な4テーマに関するチェックポイント

 井上氏とのディスカッションでは、限られた時間ながら濃い意見が交わされた。井上氏はバッカイム氏のプレゼンテーション内で「ブランドセーフティオフィサー」にもっとも注目したという。何人くらいいるのか、との問いにバッカイム氏は「欧米でもやっと数名、広告主だけでなく広告会社側もいる。それは彼らも責任を持つ表れなのでいいことだと思う」と述べる。ブランドセーフティインスティテュートでは現在、ブランド側から50名が認定を受けようとしており、別途30名のパブリッシャーも取得に動いている。

 また「ブランド毀損の測定は可能か」との問いには、「単に不正を把握するミクロレベルなら複数のベンダーのツールが活用しうるが、マクロレベルで測定するなら、ある時点での生活者のブランドパーセプションやその変化を加味しないといけない。異なる観点から複数の測定を走らせる必要がある、決して簡単ではないだろう」と回答。とはいえ双方、ブランド毀損の測定につながる何らかの策は講じるべき、と意見が一致した。

 グローバルのトレンドはこれまでも若干のタイムラグをもって日本に流入しているが、各業界団体の動きを見ても、そのタイムラグは縮まっている。海外の動向を注視することで、いち早い対応も可能になるだろう。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32640

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