※本記事は、2019年12月25日刊行の定期誌『MarkeZine』48号に掲載したものです。
五輪におけるマーケティングとは
周知の話ではあるが、企業にとっての五輪活用はスポンサー企業であるか否かで実施できることが大きく変わる。東京大会ではオリパラ合わせて100社以上がスポンサー企業となっており、その多くが早くから実行計画を立て、現時点では最終段階に入っていることだと思う。先般のラグビーW杯では様々なテストマーケティングを試していた企業も見受けられた。過去のスポンサー企業成功事例として、古くはロス大会のスポンサーシップで大きくシェアを伸ばした大手カード会社や、ロンドン・リオ大会でブランドイメージ向上に成功した大手消費財メーカーなど、スポンサーシップにより成長を実現させた企業は数多い。
では、スポンサー以外の企業はどうか。ご存じの通り五輪は強力なレギュレーションがあり、スポンサー以外の企業が実施できることはそもそも限られている。しかし、必然的に注目が集まる機会であるため、開催時期にあわせてプロモーションを実施する企業も多い。たとえば、ロンドン市内に2010年より展開された一大レンタサイクルインフラに、ある金融機関がスポンサードし、ロゴ、コーポレートカラーを纏った自転車が1万台以上設置された。結果として、ロンドン大会時にスポンサー企業以上にブランドイメージが向上したと言われている。また2016年リオ大会では、スポーツ用品メーカーがマイケル・フェルプス選手を中心としたプロモーションを、レギュレーションに抵触しない範囲で大きく展開することで、オフィシャルスポンサーよりもイメージを向上させてしまった。アンブッシュ・マーケティングとならないようにしなければいけないが、五輪に直接関係のないフェアな形でプロモーションを実施し、成功している企業も存在する。
五輪のホット期間は短い
これらを踏まえ、東京大会ではどのようなマーケティング活動をするべきか。もちろん、狭義のマーケティングであるプロモーションも1つの選択肢であるが、筆者はそれだけでは十分ではないと考えている。
理由としては、五輪におけるマーケティングは「1.厳格なレギュレーション」「2.(スポンサー企業の場合)高コスト」「3.短いホット期間」という3つの特徴があるためだ。
それぞれ重要な論点だが、ここでは3点目の「短いホット期間」について掘り下げる。東京オリンピックの開催期間は7月24日(金)〜8月9日(日)の17日間、パラリンピックは8月25日(火)〜9月6日(日)の13日間である。毎大会の基本的な傾向として、大会直前に盛り上がりが一気にヒートアップしたのち、緩やかに落ち着いていくことが挙げられる。盛り上がりのホット期間は、オリンピックが開催される「17日間」であることが多く、期間にして3週間もないのである。
もちろん、今回は自国開催なので3月26日の聖火リレー開始から盛り上がることを期待したいが、それでも4〜5ヵ月間程度が緩やかなホット期間だと言える。いずれにしてもピーク期間は極めて短いため、大会タイミングでのプロモーション効果のみをコア施策として行うことは、多くの企業にとってどこまで効果があるかは懐疑的である。では何をすべきか。