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編集長インタビュー

人材への投資不足が「マーケティングの貧困」を招く プロマーケターを育成する手立て【田中×庭山対談】


 昨今、マーケティング業界の人材難が叫ばれている。中でもBtoB企業の人手不足は深刻だ。米Spear Marketing Groupが2019年1月に発表した調査データによると、BtoB企業の実に90%以上が「能力のあるマーケターの採用は難しい」と回答したという。この波は日本にも到来している。様々なマーケター育成プログラムやビジネススクールが設立されているものの、キャリア形成の手法や、スキルを客観的に計測する方法は確立されていない。中央大学ビジネススクールで教鞭を執る田中洋氏と庭山一郎氏に、これからのBtoBマーケターのキャリア形成について議論を交わしていただいた。

日本にはマーケターの育成環境が整っていない

――最近ではビジネスの一線で活躍しながらも、実務だけでは知り得ないアカデミックの知識を得るために大学院へ通うマーケターが増えています。お2人が講師を勤める中央大学ビジネススクール(CBS)にも、様々な社会人学生が通っていると思いますが、どのような動機で通っている方が多いですか。

庭山:学びたい、スキルアップしたいという純粋な動機で通っている人たちが多いですね。意外と転職が目的の方は少ない印象です。私が聞いた限りでは、社費で通っている方はほとんどいなくて、8割くらいの方が自費で通っているようです。

田中:今までのキャリアを振り返りたい、自分の知識を体系立てて整理したいという方も多いですね。

庭山:「国内には伸びしろがないから、グローバルで戦うためにマーケティングの知識を身に着けよう」と危機感を感じているBtoB企業の方も多いですよ。海外市場を開拓するなら、グローバルなマーケティングの知識は必須ですから。今の日本企業には、知識がないばかりに、現地法人から上がってくるマーケティングレポートすら読みこなせない人も多いんです。

田中:「うちの会社は今までマーケティングにまったく取り組んでこなかったから、自分がしっかり学びたい」と強い課題をお持ちのBtoBマーケターもいらっしゃいますね。

(左)シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役/中央大学大学院ビジネススクール客員教授 庭山一郎氏
(右)中央大学院戦略経営研究科 教授 田中洋氏

――日ごろビジネススクールで社会人学生と接したり、ビジネス上で様々なBtoBマーケターとお会いする中で、日本のマーケティング業界は人材育成にどんな課題を抱えているとお考えですか。

庭山:そもそもの問題は、マーケターを育成する仕組みが整っていないことですね。特に日本の大手事業会社ではまだジョブローテーションが一般的で、マーケティングのプロが育ちにくい状況です。

田中:事業会社のマーケターにキャリアを伺うと、地方で営業をしていた方が、高い業績を上げたからと“論功行賞”のような形で、本社のマーケティング部や経営企画部に配属されるケースもあるようです。それで結局、「自分にはマーケティングの知識がまったくないから」と、個々人で費用を負担してビジネススクールに通っている。

庭山:そうですね、企業の人材投資への意識の低さを感じます。

田中:ところが、BtoC企業の例ではありますが、マーケター輩出企業といわれるP&Gの場合、入社時点から営業とマーケターがまったく別のキャリアを歩みます。マーケターとして入社した方は、ブランドマネージャーを目指して専門的なスキルと経験を積むことができるのです。

庭山:ジョブローテーションで突然マーケターになった人と、ファーストキャリアからマーケターとして地道に経験を積んできた人とではスキルに大きな差が開くのも当然のことです。転職が当たり前のこれからの時代、数年単位で部署異動してしまうジョブローテーションではプロは育ちません。

 ご存知の通り、米国ではジョブホップは当たり前です。自分の腕を高く買ってくれる会社があるなら、てらいなく移っていく。毎年名刺が変わる人だっているくらいです。彼らは一つの職種でキャリアを積んでいくと決めているから、違う職種にジョブチェンジすることはほとんどありません。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2023/01/23 09:25 https://markezine.jp/article/detail/32734

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