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B2B New Vision

SaaSには大きなホワイトスペースがある。ベンチャーキャピタリスト倉林 陽氏が注目する新しい世代

SaaS時代の組織とキャリア

――人材のお話が出たのでお聞きしたいのですが、伸びていくSaaSの会社の組織づくりにはどんな共通点があると思いますか。

倉林:いい質問ですね。スタートアップにおいては組織も大事なのですが、その前にやはり経営者ですね。どのぐらい目線が高いか、お客様の課題を知り尽くしていて、それを解決したいというモチベーションがあるか。そのペインが本当に顕在化していて、それを解決するソリューションがプロダクトマーケットフィットしそうか。そういうところを見ています。

 まだプロダクトがないときに投資することもあるので、そういう場合、経営者の目線の高さというのは非常に重要です。目線が低い経営者だといい人が集まってこない。それまでもらっていた給与より少ない額でも一線級のエンジニアやセールスを採用できているかに、我々は注目しています。

 経営者の次に大事なのは組織づくりです。会社の成長に応じて、セールス、マーケティングを立ち上げて、チャーンが出る前にカスタマーサクセスを作っていく。最近では急速に人が増えていくのでミドルマネジャーが重要になっています。いいプレーヤーだけではなく、いいマネジャーを育てることも迅速にやっていく必要があるのですが、実はここができていないので成長が鈍化する会社は数多くあります。

――急速に成長する時期は、会社にとっていろいろな問題が浮上しそうですね。

倉林:なんだか成長が止まってきたなというときは、大体この「マネジャー問題」というのが多いですね。投資のステージというのは以下の表のように進んでいきます。会社の規模が10人以下のときに我々が投資して、シリーズBで40~50人くらい。その次に130人くらいというふうに増えていくと社長のビジョンが届かなくなってくる。ミドルマネジャーを育てる意識はすごく大切だと思います。

――MarkeZineの読者は、現場のプレーヤーである20~30代が多いのですが、次はどこに自分の仕事のチャンスをつかみに行くべきかで悩んでいる人も多いと思います。

倉林:キャリアについての考え方は人それぞれですが、私が関わっている領域のお話をすると「チャンスはいっぱいある」ということは言えると思います。なぜかというと、たとえば「カスタマーサクセスのプロフェッショナル」というのは、まだ日本の人材市場に全然出ていないからです。

 伸びているSaaSの会社でカスタマーサクセスのヘッドをやっていて、チャーンレートが30%あったけれど、ネットリテンションレートを120%にしたという実績があれば、給与が高くてもそのノウハウを欲しい会社は多いはず。アメリカではすでにそういう状況になっていて、ジョブサーチの「Glassdoor」を見ると、カスタマーサクセス・マネジャー経験者が、非常に高い給料で引き抜かれている。セールスイネーブルメントやM&Aも同様です。私は分析が好きなので、20年前に戻ったとしたら絶対カスタマーサクセスの勉強をしていると思います。

――キャリアの面でも、SaaSの世界にはホワイトスペースがたくさんありそうですね。

倉林:実は、デジタルの恩恵を受けてない業界が日本ではほとんどなんですよ。たとえば建設業界。ここはいま、オクトがディスラプトをしています。オクトはクラウド型の施工管理サービスを提供していて、日本のSaaSで過去最高レベルの成長率と成長効率を達成している会社です。

 薬局向けにクラウド電子薬歴サービスを提供しているカケハシ、教育分野ではAIを活用した個別学習を可能にするatama plusもありますし、これからもっと出てくるでしょう。たとえばいま不動産業界にいてこの業界を変えたい、クラウドやSaaSの力を使って変革を起こしたいと思うなら、それはやりがいのある仕事。私もそういう起業家を待っていますし、自分が好きな業界でテクノロジーという武器を使って何か変革を起こしてほしいと思います。

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この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

井浦 薫(編集部)(イウラ カオル)

MarkeZineで主に書籍を作っています。
並行して、MONEYzineにも力を入れています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2020/02/17 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32757

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