次なる波はポッドキャスト? Netflixのマルチチャネル戦略
仲:Netflixの場合、採用コンテンツをマルチチャネル的に出し分けているのが特徴ですが、各チャネルでのコミュニケーション戦略に違いはあるのでしょうか?
徳本:たとえばLinkedInのようなビジネスSNSは自社の文化や哲学、ビジネスにおける主要なアップデートなどをプロフェッショナルに語るのに適しています。日本ではWantedlyが人気ですよね。採用ブランドの発信拠点として行き着くところはこうしたビジネスSNSなのかもしれませんね。
その一方で、世界的に見てもTwitter(@WeAreNetflix)はより広範なエンゲージメントを獲得するのに適したプラットフォームです。求人情報がシェアされることもありますが、その他に仕事についてのユーザーの質問に直接答える場にもなりますね。Instagramはご存知の通りビジュアル要素の強いSNSですから、写真や動画クリップを投稿したいのであれば自ずと活用することになるでしょう。他にも、ストーリー機能でイベントのレポートをすることもあります。このように、それぞれのチャネルの特性やオーディエンスの特徴を駆使して最終的なゴールを目指しています。

仲:採用に特化したYouTubeチャンネルやポッドキャスト配信でも先駆的な取り組みをされていますね。
徳本:動画は信頼性の高い表現フォーマットですので、YouTubeでの動画配信にはずっと力をいれています。私たちのチャネルに訪れたユーザーにはNetflixのワークカルチャーに飛び込むような体験を提供したいと思っていますし、そうすることで私たちの発信するカルチャーにより多くの文脈を与えることができますから。
徳本:そして触れていただいた通り、私たち独自のチャレンジとして採用ポッドキャストにも力をいれています。1ページのブログや2~3分の動画では表面的な内容しか伝わらないとしても、2人の従業員が私たちの会社について45分間語り合う音声を聞けば、そのポジションに関心のある視聴者はより深い理解へと導かれるはずです。それに、動画に比べて制作コストがかからないというメリットもあります。
仲:それぞれのチャネルによって最適な体験の形があるということですね。
徳本:はい。さらに言えば、チャネルによってオーディエンスとなり得る職種にも微妙な違いがあります。エンジニアの反応が最も多いのはTwitter、マーケティングやクリエイティブ職種はInstagram、制作部門はFacebookといった具合です。
リクルートメント・マーケティングを企業経営の礎に
仲:お話を伺っていると、いよいよ採用はマーケティングに近づいてきているという確信を得ることができますね。そうなるとこれまでと同じ指標で採用成果を追うわけにはいかなくなると思いますが、We Are Netflixの取り組みはどのような指標で追っているのでしょうか。

徳本:We Are Netflixがユニークなのは、採用以上に企業としてのブランディングに大きく関係するところかと思います。
一般的にマーケティングの観点から見れば、このような取り組みを評価するためにチャネルの登録数やエンゲージメント率、インプレッション数などを追うでしょう。ただ、Netflixでの評価軸は、定量的な指標以上に「採用ターゲットに近い人がフォローしてくれているか?」「ポジティブな認知をもたらし、採用につながるような変化を起こせているか?」といった定性的な判断軸での見極めが大切だと感じています。そういう意味では、各チャネル上でのエンゲージメントの質や、採用候補者とのマッチが高ければ高いほど、取り組みは評価できると思います。
仲:量から質への転換ですね。かつてのように母集団をかき集めることができない以上、採用におけるマッチ精度を上げるのは企業にとって合理的な選択だと思います。さらには先ほど「条件」よりも「共感」を優先するというお話があった通り、採用をめぐるオファー競争が苛烈化する今の時代、事業ミッションやカルチャーといった企業のDNAとなる部分で採用競合企業と自社とを差別化しなければ選ばれることが難しい。
一方で、自社の発信したコンテンツに共感してくれた人を採用できれば、カルチャーフィットがスムーズになりますし、同じゴールに挑む優秀なチームを作ることができます。Netflixが飛躍を続けられる理由は、そういった採用文化にもあるのだということを知ることができました。本日はありがとうございました。