ビジネスパーソンがデザインやアートを学ぶには?
廣澤:ビジネスパーソンの間で、デザインやアートを学ぶことが流行っています。また、デザインシンキングといった思考方法も話題になっていますが、どのように思われますか。
坂井:よく語られているデザインシンキングって、エンターテインメントですよね。思考のプロセスがあって、それに参加することで、デザイナー以外の人も「デザインに関わった」と快感が味わえる仕組みです。

坂井:結局のところ、センスのない人が10人いても、センスのないものしかできません。ダイバーシティのある、多様なチームを作り、かつセンスの良い人が加われば、デザインシンキングは機能するかもしれませんが、それはキャスティングで成功しただけであって、仕組みが成功したわけではない。誰がやるかが、1番重要です。
廣澤:とはいえ、デザインやアートを学んでいきたいという、それこそ欲を持つことはムダではないと思っています。これまで美意識やアートに触れていなかった人が、それらを理解する重要性に気づいて学びたいと考えたとき、どのような方法がありますか。
坂井:美しいものをたくさん見ることですね。海外旅行へ行っても、観光はせずに美術館を回りましょう。専門的に美術を学んできた人に追いつくのは、大変なことですよ。でも、たくさんの美しいものを見ていくと、普遍的なものやトレンドがわかるようになると思います。
廣澤:特別なことではないんですね。おっしゃる通り、たとえば洋服は流行が現れやすい反面、脈々と続く普遍的なデザインもあると思いました。そういったところから、時代が持っている欲望を読み取っていくことが重要なんですね。
一次情報を自分の足で集めよう
廣澤:最後に、若手のデザイナーやマーケターにメッセージをお願いします。
坂井:常に自覚をもって生活をすること、そして、あらゆる世界中の街を自分で歩くことですね。自分の足を使わないと、変化には気づけません。本、テレビ、Webを見てものを考えても、すべてが満たされるとは思えない。
たとえば最近はゲームセンターには、老眼鏡が置いてある。リタイアした人が遊ぶ場所になっています。歌舞伎町も、今や海外から来た親子が歩く観光名所でしょう。インサイトが変わった事例はたくさんあります。
廣澤:9時から18時が仕事、それ以外の時間は仕事のことは考えないといった働き方ではなく、稼働時間以外からたくさんのヒントが得られるんですね。
坂井:会社の中で仕事をすることだけが、仕事ではありません。僕だって、常にクライアントのところへ行ったり、街を歩いたり、外へ出たりしながら仕事のヒントを得ています。
自分の目で見て頭で考えることが重要です。あとは、一次情報を得ること。どこかのメディアが取り上げたことを話しているだけでは、知識を持っているとは言えません。
一次情報は検索しても出てきません。「検索エンジンが知らないことを知っている」、「一次情報をたくさん持っている」ことが、知識の豊かさだと思います。友人と一次情報の交換会をしてみるなど、一次情報を集める努力をしてみてはどうでしょうか。