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“意味のイノベーション”で問い直す、生活者との関係性

これからのマーケターに求められるのは、生活者と企業の対話を導く“ファシリテーター”の役割

生活者と企業が共感し合う関係性を目指す

 この連載では、意味のイノベーションと呼ばれるアプローチを紹介しながら、これからの時代に生活者との新たな関係性を構築し、ヒット商品・強いブランドを生み出していくための方法を検討してきました。

 意味のイノベーションは、自らの価値観を問い直し、新しいまなざしを持って生活者に届けるものを生み出す、インサイドアウトのアプローチであり、ベルガンティ教授は「意味を考えることで新しい方向性(Direction)を導くことが重要である」と述べています。答えを探すアプローチだけでは、新しい方向性を見出していくのは難しいことが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

 生活者のインサイトを捉えようと、できる限り生活者に寄り添い共感しようとするアプローチは、多くの企業で行われるようになってきました。これからの時代に求められるのは「生活者にいかに共感してもらえるか」「共感につながるような価値観を企業側が導けるか」という、一歩進んだアプローチなのではないでしょうか。

 ベルガンティ教授の提示するギフトのメタファーは、こうした互いに共感し合う企業と生活者の関係性を描いたものであるとも言えるでしょう。

ギフト」には2つの姿勢が重要。1つは受け手を注意深く観察し、潜在的に欲しがっているものや、これから喜び得るものを探る姿勢。たとえば恋人にプレゼントを渡す時、欲しいものを聞いてそれを用意しても、相手に驚きを与えることはできない。

 もう1つは、送り手と受け手の関係性を重視し、ギフトを通じてどのような関係を築いていきたいのか考える姿勢です。ギフトは両者の関係性が存在して初めて成立するもの。送り手自身が魅力的であることが重要であり、具体的なビジョンがなければ、サスティナブルな関係を構築することは難しい(第1回より)。

マーケターに求められる、ファシリテーターとしてのあり方

 マーケターはその役割の性質上、生活者を取り巻く状況やインサイトを正しく理解できるかどうか、正しくブランドイメージを形成できているかどうかといったように、自らの“外側”ばかりに目を向けてしまいがちです。

 しかし“豊かなギフト”は送り手のことを見ているだけでは実現しません。自分たちのことをより深く理解したり、価値観を問い直したりしていくことで、生活者との関係性はより豊かなものになっていくはずです。

 新型コロナウィルスによる影響を受けて、生活者の価値観がこれから大きくシフトしていくことは、すでに様々な場面で言われていることですが、そうした価値観のシフトをリードできる企業であるかどうかが、大きな差につながることでしょう。

 変化の激しい社会において、そこに身を任せるのではなく、自ら流れを生み出していくためには、新たな価値観を導いていくことが重要になります。これからのマーケターには、企業と生活者の間に立ち対話を導いていく、ファシリテーターとしての役割が欠かせないものになっていくと筆者は考えています。

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この記事の著者

小田 裕和(オダ ヒロカズ)

株式会社ミミクリデザイン ディレクター/デザインリサーチャー。東京大学大学院 情報学環 特任研究員。千葉工業大学大学院工学研究科博士課程修了。 博士(工学)。千葉県出身。新たな価値を創り出すための、意味のイノベーションやデザイン思考といったデザインの方法論や、そのための教育と実践のあり方について研究を行なっている。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/05/18 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32859

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