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セイバン×アドエビスが取り組む、オンオフ統合したマーケティングの成功に欠かせない分析とは

 よりよい顧客体験の提供のため、オンラインとオフラインを統合したマーケティング施策が当たり前のものになっているが、はたして効果測定も統合して行えているだろうか。ランドセルメーカーのセイバンでは、現在イルグルムが提供するプロフェッショナルサービス(※)のマス×デジタル統合分析レポートを使って統合分析を行い、マーケティング施策に生かす取り組みを進めている。セイバンで広報宣伝を統括する日高氏、イルグルムCMOの吉本氏、プロフェッショナルサービス事業部の岸本氏にサービスを利用することになった背景、分析結果から見えてきたことを聞いた(※現在は、サービスの提供を中止している。2020年7月時点)。

オンライン・オフライン全体の動きを可視化、評価したい

MarkeZine編集部(以下、MZ):セイバンはイルグルムが提供する、プロフェッショナルサービスのマス×デジタル統合分析レポートでオンライン施策とオフライン施策の統合分析を実施したと聞いています。まず、その背景について教えてください。

日高:オンライン・オフラインを含めた施策全体の動きが見たいというのが主な理由です。

 我々は現在、総合スーパーや百貨店、専門店などのリテール、直営店、ECという3つのチャネルでランドセルを販売しています。広告宣伝に関しては、テレビCMなどのマス広告を出稿しながら、デジタル広告にも出稿しているという状況でした。

 この状況下で、施策がどのチャネルに対しどのような効果があったのかを見たいとき、デジタル広告であれば効果を可視化しやすいのですが、それ以外のテレビCMや紙のカタログなど他の施策は効果が見えにくい。加えて、施策全体の相関なども可視化できる必要があると考えていました。これらのデータを可視化した上で、テレビCMとデジタル広告の最適な予算配分を検討したいと考えていました。

株式会社セイバン ランドセル事業部 販売促進グループ グループ長 日高洋氏
株式会社セイバン ランドセル事業部 販売促進グループ グループ長 日高洋氏

MZ:吉本さんにお聞きしますが、このようなニーズは御社のクライアントの中でも増えているのでしょうか?

吉本:アドエビスではリリースしてから16年、長らくデジタル上のユーザー行動をトラッキングしてきました。その中で、セイバン様のように「マス広告の成果を測りたい」「施策全体の相関関係を見たい」という方は増えています。

 またデジタル上のユーザー行動に関しても、YouTubeの動画広告やインフルエンサーを使ったSNS投稿などが登場したことで、これまでの分析だけでは効果が見えにくくなっています。これらの課題に対する対策は急務だと感じており、我々もマス×デジタル統合分析レポートを通じて課題解決に貢献したいと考えています。

株式会社イルグルム セールス・マーケティング本部 本部長 執行役員 CMO 吉本啓顕氏

マス×デジタル統合分析が明らかにする3つのこと

MZ:マス×デジタル統合分析レポートでは、具体的にはどういったことが明らかになるのでしょうか。

岸本:大きく分けて3つのアウトプットでオンライン・オフラインを統合した分析結果を提供しています。

1.各施策の因果関係の可視化

2.各施策による売上への影響度合いの提示

3.費用対効果の可視化と予算の再配分

 まず、各施策の因果関係を図で可視化し、その上で各施策がどの程度売上に対し影響しているのかを定量的に表します。ここまでで施策の効果と投資したコストがわかり費用対効果を把握することができるので、最後にどのように予算を再配分すべきかのシミュレーションを行います。

 また、今回のセイバン様の場合は、各チャネルの効果を時系列別に見えるようにしました。その上で、売上にあまり寄与していない施策はなんだったのか、どの施策をどれくらい実施すればよかったかなどを分析して、予算の再配分を提案させていただきました。

株式会社イルグルム プロフェッショナルサービス事業部 岸本史人氏

MZ:分析対象となるデータはどういったものなのでしょうか。

日高:オフラインのテレビCMの出稿日・出稿量、製品カタログの配布量、バナーやリスティングなどデジタル広告の出稿量、自社サイトのPVやオーガニックの検索量ですね。またKPIとしてはリテール、直営店、ECの3つの主要チャネルにおける売上を見て分析をしてもらいました。

テレビCM・デジタル広告が各チャネルへ相関があることを証明

MZ:分析によって、どのような気づきが得られましたか。

岸本:セイバン様は昔から丁寧にかつ様々なマーケティング施策を実施している企業なので、各施策でどのくらいの成果が得られるかはある程度把握されていました。今回の結果を見ても、各施策間の因果関係が認められ、タイミングもきれいに一致していることがはっきりしました。

因果関係を明らかにする図

岸本:ただし、施策の中には新たに導入された施策があり、過去施策と上手くかみ合っていない部分もありました。そのため、より広告のポテンシャルを引き出すために最適なタイミングの提示はさせていただきました。

日高:日々新しい施策が求められる中で、これまで行ってこなかった施策がもたらす波及効果や適切なタイミングがわかったのはよい示唆だと考えています。

 我々としては、テレビCMがECサイトへの購入につながっているという因果関係や、まとめサイトの情報がリテールや直営店で購入するときの情報源として効いていることなどが、定量的に見える化できてよかったです。肌感覚としては効果を感じていたものの、目に見えていなかったものが見える化できたので、今後施策を展開していく際も自信を持って行えると思っています。

時系列の分析で施策の再設計をしやすく

MZ:吉本さんは、今回の分析結果についてどのように考えていますか。

吉本:オンライン・オフライン全体を分析することによって、各施策のコストをどれだけかけるべきかの根拠が得られるのは非常に大きいと思いました。

 これまでデジタル広告に関してはアドエビスを使えば、ユーザー単位で紐づけてコンバージョン数を測ることができるため、逆算してどの広告を使えばよいかを判断することが可能でした。ただ、オフライン広告はそれができず、統合的に施策を評価する手段を持ち合わせていませんでした。

 しかし、売上を軸に各施策を評価できることで、勘や経験ではなくデータを軸にプランニングができます。こういったソリューションを展開できるようになったのは我々としてもよかったです。

岸本:さらに「売上に対しどの程度この施策が効いているか」を時系列で見ることができます。たとえば、テレビCMを経由したオーガニック検索量を見て、テレビCMの波及効果がどの期間に特に大きかったかなどを把握することができます。それを踏まえて、予算を再設計することが可能です。

日高:この「時系列」で見られる点はマス×デジタル統合分析レポートの非常によい点だと思っています。ランドセルはマーケットが毎年新しくなるものの、いつ想起されて購入されるかの想定が難しい商品です。施策によって人を動かせたのかも判断しにくいと思います。

 しかし、今回の分析結果を見て、「前半もう少し仕掛けられたんじゃないか」など、新たな気づきが得られたので、2020年度の施策で改善できればと考えています。

分析から見えた新たなカスタマージャーニー

MZ:分析結果をもとに、今後どのようにコミュニケーションプランを改善しようと考えていますか。

日高:ありがたいことに、セイバンはランドセル市場で大きなシェアを獲得できているのですが、その分様々なターゲット層に販売しているため、クラスタをどう分けるかが課題となっています。

 そこで現在、「購入前に沢山情報を調べて検討する人」と、「なんとなく聞いた情報をもとにお店に行き、店頭スタッフの情報で検討する人」などでクラスタ分けできないかと考えています。今回の分析結果はそのクラスタ作成時のインプットとして非常に有用だと思っています。

岸本:クラスタごとにカスタマージャーニーを作って、そこに対するコミュニケーションプランを作る上で、非常に役立つデータだと思います。

日高:その通りですね。分析結果のおかげで、これまでとは違うクラスタ、カスタマージャーニーを発見できそうだと思っています。

MZ:得られた分析結果については、どのように評価していますか。

日高:来シーズンのアクションのベースになったのはよかったです。この分析結果が正しかったかどうかは、施策によって得られた売上を見て判断したいです。

 また、自社ECはCPAだけ見ると高くなってしまうのですが、各施策やチャネルで相関があるデータを社内のメンバーに見せることで、デジタル広告がオンラインの売上だけではなくオフラインにも効いていることが証明できますし、説得もしやすくなると考えています。

マーケティング意思決定の重要な根拠に

MZ:今後の展望について教えてください。

日高:広告・宣伝は、今後ますますかけた予算に対する成果が厳しく求められ、その成果の証明が必要になってくる状況です。その中で、マス×デジタル統合分析レポートのようなものを活用していくことで、説明できるようにしておくべきだと考えています。

 今回の分析結果をもとにした施策はまだこれからですが、想定した動きが生み出せるか、売上にどう変化が出るのか、これからが非常に楽しみです。

吉本:アドエビスのサービスとして、これから強化していきたい点が2つあります。

 1つ目は、計測の精度向上です。現状広告効果測定ツールのシェアは非常に高いものとなっていますが、外部環境の激しい変化の中でいかに精度を担保し続けるかは課題です。今後も精度向上には、引き続き努めていきます。

 2つ目は、蓄積されたデータをどのようにマーケティングの意思決定に使っていただくかという点です。アドエビスのデータだけでなく、様々なマーケティングデータを複合的に当社で分析を支援して、最終的にセイバン様のようなクライアント様に意思決定を行う上での1つの根拠にしていただければと思っています。

岸本:スマホやアプリ、動画などの登場によって計測が難しいものが出ています。その環境下でも、測れないものも含めて全体のコンバージョンを増やせる方法を考えることが大事だと思います。

 計測可能なものはアドエビスで精緻に測りながら、プラスアルファをマス×デジタル統合分析レポートのようなもので補完していく。後者は年々すごい勢いで需要が増しているので、我々としても、プロフェッショナルサービスを通じて、企業のマーケティング支援をしていきたいと考えています。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/17 15:25 https://markezine.jp/article/detail/32887