「プライバシーサンドボックス」を待つだけで良いのか
Googleの収益は、広告によるものが収益全体の84%を占めています。そのためGoogleが重要視する広告事業を自ら手放すということは考えにくく、実際に「ユーザーのプライバシーを保護しつつ、ターゲティング広告を配信すること」を目指した、「プライバシーサンドボックス」の構想を発信しています。
しかし、現状では「5つのAPIを使って、ユーザーを追跡しないターゲティングを行う」「ファーストパーティCookieを活用する」等の断片的な情報しか発信されておらず、「これで完璧な対策とターゲティングが可能になる」とも明言されていません。
実装されるものがどのような機能で、どこまでの範囲をカバーできる機能であるのかも今のところ不明瞭であるため、Googleからの続報を待つ以外に情報を得る方法はありません。
現時点では「プライバシーサンドボックス」について推測するしかないため、「ただ待っていること」をマーケティングの戦略として良しとするのであれば、このプライバシーサンドボックスに期待するのも間違いではないかも知れません。
では、現時点で「サードパーティCookieに頼らない」「プライバシー保護が可能な」リタゲツールとして確固たる手段は存在しないのでしょうか。
Cookieに頼らない「チャットコマース」の可能性
ひとつの解決策として、Webブラウザを介さないという方法があります。当たり前ではありますが、Webブラウザを介さなければ、Cookieに左右されることはありません。そして、人が情報を得るための手段はWebブラウザ以外にも存在しており、ユーザー数もブラウザと食い合うことはありません。
上記のような強みを持った広告媒体のひとつとして、「チャットコマース」があります。「チャットコマース」(海外ではConversational Commerce……通称“CC”と呼ばれている)とは、LINEやFacebook Messengerなどのチャットアプリのインターフェースを通じて企業やサービスと消費者がAIと「対話」しながら、食料品の注文、飲食店の予約、旅行の予約、衣服の購入などができるサービスを指します。
チャットコマースでは、Webブラウザとは用途が明確に違うメッセージアプリ上で商品・サービスの購買が可能であり、「ユーザーが今何を求めているのか」「CVに至り易いユーザーか否か」等、これまでのリタゲではCookieを参照して得ていた情報を、ユーザーと会話することによって得ることが可能です。
したがって、「追跡によって得るデータを使ったリタゲ」ではなく、「直接ユーザーから教えてもらう形で得るデータを使ったリタゲ」を行うことができるのです。このリタゲはユーザーのセキュリティ意識を尊重しつつ、離脱したユーザーにもアカウントをブロックされない限り、何度でもリタゲを行うことが可能です。
また、ユーザー本人から直接要望をヒアリングするため、精度も高くCookieを参照することもないので、今後それらが損なわれることもありません。そのため筆者は、チャットコマースが「リタゲ2.0」になり得ると考えています。
今後、企業はWebブラウザ上でユーザーに対して精度の高いターゲティングを行うことができなくなるほか、Webブラウザ上で行われる購買は、メッセージアプリ上で代替されることになっていくことが予想されます。
これから先を見据えた「リタゲ2.0」として、「チャットコマース」に注目してみてはいかがでしょうか。