「行動を追跡することで行うリターゲティング」は機能しなくなる
これだけ普及したリタゲが、今後は参照するデータとしてCookieを頼ることができなくなるため、現状よりも企業から見たユーザーの解像度は低くなることが予想されています。
実際に、Googleが事前に調査し発表したデータによれば、「サードパーティCookieを参照できなくすると、パブリッシャーの広告収益が平均52%(中央値では平均62%)減少する」という調査結果が出ており、同時に広告のブロック率も上昇したと発表しています。
Googleがその理由について同調査後にアンケートで調査したところ、「自分に関係のない広告だから」と回答したユーザーの割合が増加したとの発表も公開されています。
各社のブラウザでサードパーティCookieがサポートされなくなった場合、リタゲが如何に厳しい状況に立たされるかはここまでの解説でおわかりいただけたと思います。
では、サードパーティCookieに頼らずにリターゲティングを行うことは不可能なのでしょうか。
「デバイスフィンガープリンティング」はCookieの代替になり得るか
Cookie制限の回避策として、「デバイスフィンガープリンティング」を活用する動きが出ていることをご存知でしょうか。デバイスフィンガープリンティングとは、端末のOS、使用言語、IPアドレスなどを総合して個人の端末を特定するオンライントラッキングのひとつであり、日をまたいでも同一の属性を検知し、同一ユーザーであることを推定することが可能です。

Cookieはユーザー側でも簡単にクリアすることが可能ですが、フィンガープリンティングはユーザー側でOSの変更、IPアドレスの変更を行うことでようやく追跡から逃れることができます。多くのユーザーは個人でそこまで対策を講じることは恐らくないため、フィンガープリンティングを行うことでCookieを参照せずともユーザー個人の特定、追跡が可能です。
しかし、この手段はCookieの代替にはなり得ないでしょう。冒頭で述べたように、ユーザーの個人情報保護は最優先事項です。デバイスフィンガープリンティングの「バックグラウンドで機能し、あらゆる情報からユーザーを特定し、追跡する」という特徴は、プライバシー保護の理念と相反するものと言えるでしょう。
実際にApple、Mozilla、Googleは、将来的に悪質なフィンガープリンティングをブロックする機能をブラウザ、OSに追加する方針を発表しています。
このように、Webブラウザを展開する企業はフィンガープリンティングに対して、明確に「悪質なトラッキング機能である」との見方を示しており、現行の法整備は遅れていますが、今後は法的にも規制の対象になることが予想できます。