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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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セールスフォース・ドットコムに聞く、部門間連携のコツとデジタル人材の育て方

 近年、BtoB領域において「The Model」という営業プロセスモデルが注目を集めている。マーケティングやセールスといった部門を越えた連携により、大きな成果を出していく同モデル。しかし、この部門間連携に課題を抱える企業も多いのではないだろうか。本稿では、The Modelを実践するセールスフォース・ドットコムのデジタルマーケティングビジネスユニットを取材。クライアントの課題に向き合う視点の養い方、そして部門間の連携の秘訣を聞いた。

様々な経歴のメンバーが集まるチーム

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、BtoB領域におけるクライアントの課題への向き合い方、社内連携の仕方についてお聞きしたいと思います。御社では営業プロセスをマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4段階に分ける「THE MODEL」という営業プロセスモデルを実践されているのですよね。

伊奈:はい。既に実践しているCRM営業チーム側のプラクティスをベースに、マーケティングクラウド本部でもベストプラクティスを作ろうと尽力しているところです。弊社も社員数が増え、組織も複雑化している中で、お客様のDXを推進するために組織として最大限のパフォーマンスをどう効率的に発揮していくか、より良い組織連携のあり方を日々模索しています。

(写真左より)セールスフォース・ドットコム 執行役員 マーケティングクラウド本部 伊奈憲一郎氏/同本部 アカウントエグゼクティブ 中村佳苗氏/同本部 アカウントエグゼクティブ 泉 健一郎氏
(写真左より)セールスフォース・ドットコム 執行役員 マーケティングクラウド第二営業本部 伊奈憲一郎氏
同本部 アカウントエグゼクティブ 中村佳苗氏
同本部 アカウントエグゼクティブ 泉健一郎氏

MZ:そうなのですね。では、まずマーケティングクラウド本部の体制と、皆さまのミッションについてうかがえますか?

伊奈:マーケティングクラウド本部には大きく3つの営業組織があります。まずは業種やお客様の規模別に担当を分けている第一営業本部と第二営業本部。それに加え、新たなデジタルマーケティングソリューションを日本で展開していく戦略と推進を担う戦略ソリューションチーム。私は金融、製造業、リージョンのお客様を主に担当する第二営業本部を統括しています。

中村:私は中堅中小企業(以下、SMB)を幅広くご支援しています。元々はSIerに勤めており、1年半前にセールスフォース・ドットコムに入社し、SMB向けの営業体制の立ち上げから関わっています。

泉:私は以前、印刷業界にいて、約1年前にセールスフォース・ドットコムに入社しました。現在は第一営業本部で、主にリテールの企業を担当しています。

営業チームが並列にタッグを組む「プライム・プライム」体制

MZ:中村さんと泉さんは、お二人ともデジタルマーケティング領域のご出身ではないんですね。

中村:そうですね、デジタルマーケティングビジネスユニット(以下、DMBU)には他にも様々な経歴を持ったメンバーが集まっています。

MZ:皆さんが所属されているDMBUとは、どのような括りなのですか?

伊奈:DMBUは、BtoC、BtoB企業に対してデジタルマーケティングとコマースソリューションの販売を担当する部門です。マーケティングクラウド本部はコマースクラウド本部等と共にDMBUの傘の下にあり、各本部ではマーケティング、インバウンド営業を中心に進めるセールスデベロップメント、そして営業が場を同じくして連携しながらクライアント企業の迅速な課題解決にあたっています。

 これは当社がデジタルマーケティングソリューションである「Salesforce Marketing Cloud(以下、Marketing Cloud)」を扱うようになった経緯にも関わるのですが、当社は元々BtoB企業にSFAを提供するビジネスモデルからスタートしています。BtoC企業にデジタルマーケティングソリューションを提供するようになったのは約7年前です。マーケティングやコマースのソリューション展開によりBtoC企業のビジネスを加速させていくプランの中で、テクノロジーの進化や顧客のニーズの変化が激しい領域のお客様のビジネス支援をしていくためのあるべき組織について議論がなされました。

MZ:確かに、マーケティングやコマースとなるとお客様の業務領域も大きく変わりますし、モバイルシフトにより消費者の購買行動が劇的に変わっている中でお客様の変革を支援していくためのスピード感も求められますね。

伊奈:はい。今までのCRM営業チームが最前線でデジタルマーケティング営業チームが後方支援という形ではニーズに応えきれないことが想定されたので、DMBUという組織を新たに組織し、CRM営業とデジタルマーケティング営業がそれぞれ連携しながら責任をもって前線に立つ「プライム・プライム」という営業体制を敷いています

複雑化する消費者ニーズに、多様なソリューションで応える

MZ:Marketing Cloudのようなクラウド製品を導入いただくためには、製品の魅力というより、クライアント企業それぞれのマーケティング課題を理解し、その解決と製品を結びつけた上でバリューを提案する必要があると思います。DMBUの業務では、最近どのような変化があるでしょうか?

伊奈:第4次産業革命が進む中、消費者が求めるサービスレベルはどんどんと上がっています。マーケターはCXに対する高いニーズに応えていく必要があり、最近では顧客ライフサイクル全般のコミュニケーション戦略を任されてきている一方で、チーフグロースオフィサーと言われるように企業の売り上げそのものにも貢献が求めらえてきており、企業におけるマーケティング担当者への期待も高まってきています。私たちはその高い期待を背負ったマーケターの皆さんの期待をさらに超えていかなくてはいけません。そのためには、我々自身がその企業のお客様である消費者のニーズも捉えないといけません。

伊奈:我々の調査では、73%の消費者が「自分の興味関心に合わせてブランドから積極的に案内を受けたい」と答えています。MarkeZineの読者の方ならよくご存じのとおり、その状況を実現するためには、その人を精緻に把握してパーソナライズしたアプローチが必要です。このカスタマーエクスペリエンス向上ニーズの高まりから、我々への期待値も上がっていると実感しています。同時に企業側も我々も、テクノロジーもデジタルマーケティングもわかる人材の育成が急務です。

 一方で、当社はこの数年でデジタルマーケティングソリューションの拡充に努め、現在ではマーケターにとって包括的なソリューションが提供できるようになっています。それだけテクノロジーをはじめ理解と習熟は必要ですが、クライアントに提案できることに相当な幅があるのは強みです。

新人メンバーが先生になることで、異業種への理解も深める

MZ:なるほど。そうした顧客支援体制、ソリューション領域の広がりやテクノロジーの複雑さがあいまって、様々なご経歴の方が集まってきているのですね。ただ、デジタルマーケティング経験がないと、その分の教育やフォローに多少時間がかかるのでは?

伊奈:確かにそうとも言えますが、そのためにプログラムやコンテンツの充実化を図っています。また、デジタルマーケティングの経験者だからといって、この日進月歩の領域では決して勉強が要らないわけではありません。営業の領域では、各部門を横断的に捉えて営業力を強化していく取り組みを「セールス・イネーブルメント」と言いますが、弊社では営業だけでなく、SEやカスタマーサクセスチーム、CRM営業チームも含めてメンバー全員のイネーブルメントにとても力を入れています

MZ:中村さんは1年半前に入社されたということでしたが、社内の教育体制をどう思われますか?

中村:社内外の講師、パートナー企業や導入いただいたクライアントを招いて教えていただく勉強会は、すごく多いですね。その中で、私は自分の業務に必要なものから受講し、最近はあえて直接業務と関係はない領域の講義も聞くようにしています。

伊奈:それ以外にも、たとえば3月には「ホワイトボード大会」と称して、トレンド、顧客の課題を踏まえて当社の幅広い製品群の位置づけと提供価値を、ホワイトボード1枚を使って説明するコンテストも実施しました。また、異なる領域から来た新しい社員に勉強会を開いてもらうことも多いです。

MZ:新しく来た人が、先生になるんですか?

伊奈:そうですね、先日は金融業界のお客様を長年支援してきた新入社員に金融業界について教えてもらいました。

泉:私はセールスプロモーションや販促の支援を中心に手がけていたので、様々な企業のプロモーションについて日々の話の中で情報発信をしています。また常にインサイドセールス部門にも広告業界出身者やアドテク系の企業出身者も多いため彼らとも連携して、自分の知識を深めています。

密なコミュニケーションで、他部門との目線を合わす

MZ:皆さんが営業の視点でマーケティングや他のチームと連携する際は、どのようなプロセスで、どのような工夫をされているのでしょうか?

伊奈:冒頭で、DMBUではマーケティング、セールスデベロップメント、営業が密に連携しているとご説明しました。期ごとの目標数値があり、それに必要なリード、パイプライン全体の金額を割り出し、グローバル、国内の大規模イベントからオンライン施策までそれぞれの施策でどれだけの数字を見込むか細分化して落とし込んだ上で、PDCAを回しながらリード獲得から育成、成約につなげています

 このPDCAは、特にSMBに対して効果が速いです。マーケティングクラウドはまだSMBではブランドが確立していないので、様々な施策を展開しています。昨年7月には「ファンベース」をテーマにさとなおさんや様々なユーザー企業をゲストに招いてイベントを実施しました。そこで獲得したリードを活かし、インサイドセールスの担当者がすべての企業にお電話やお手紙でアプローチし、効果を確かめながらスピーディーにPDCAを回していきました。イベントをその日限りの取り組みとして実施するのではなく、その後も含めてどれだけリード創出に繋げられたか、また改善に向けてマーケティングにきちんとフィードバックできているかを非常に意識して取り組んでいます

泉:私は、マーケティングよりセールスデベロップに近い業務を担っていますが、顧客の課題を一緒に考えたり、他部署の具体的なアクションを共有することで、課題に対するソリューションの考え方や目線が合ってくる実感があります。そうすると、自然と吸い上げられる情報の質も高くなってくると思います。

中村:私の場合は同じSMBのクライアントに相対しているCRM側の営業と協業することが多いですね。たとえばマーケティングチームが大手企業向けに作成したアセットをSMB向けに咀嚼しながら、CRMの営業と共有することで、彼らにもソリューション価値を理解させ、CRMと一緒にソリューションを提案しています。

「こうあるべき」ビジョンから考えられる人材求む

MZ:今、DMBUではメンバーを募集中とのことですが、仕事の魅力をうかがえますか?

泉:各部署の役割や立場を超えて連携し、しっかり数値と全体の流れを踏まえてワンチームで営業活動や提案に取り組めるのは魅力的です。また、当社は最新のソリューションをデジタル・リアル問わず顧客接点を横断してご提供できるという強みがあります。そういった体制やソリューションセットをどう組み立てて、お客様の事業に貢献できるか、視野を広く持ってご提案できるおもしろさがありますね。

中村:製品群が強いのはまったく同意見です。加えて、SMBはプロジェクトにスピード感がある点、決断が早く効果が出るのも速い点がとても楽しく、手応えを感じています。顧客のCVRが上がった、件数が何件になったと聞くのは本当にうれしいです。

MZ:最後に伊奈さんから、DMBUの業務の醍醐味と求める人材像をお教えください。

伊奈:我々のチームの醍醐味は、一緒にエコシステムを作っていけることだと思います。デジタルマーケティングのマーケットはまだまだ広がっていきます。マーケターの課題も同じく広範囲にさらになっていきます。一方で我々がご提供しているソリューションだけでお客様の課題解決がすべてできるとは思っていません。コンサルティングや運用支援、オフラインソリューションとの連携も必要です。たとえば、最近ではDMソリューションベンダーさんとのソリューション連携を実現できるようにしました。マーケターにとって必要なエコシステムを私たちが作り上げ、提供できるようにしていく、このエコシステム作りに参画できることは大きな醍醐味だと思います。

 また求める人材像は、経験やスキルというより、ビジョンを持てることが大事だと思います。クライアントの課題をひも解き、「こうあるべきだよね」というビジョンを描いた上で企業のイノベーションをリードできる方に、ぜひ出会いたいですね。

DMBUのメンバーを募集中!

 セールスフォース・ドットコムでは現在、本記事で紹介したデジタルマーケティングビジネスユニット(DMBU)のメンバーを募集中です! 詳細はこちらから。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/04/02 11:00 https://markezine.jp/article/detail/33021