施策をスケールさせるための「デジタル×アナログ」
「Beyond Digital ~『こころ、動かす』コミュニケーションを考える」と題された本セッション。モデレーターを務める博報堂プロダクツの大木氏はまず、マーケター約400名を対象に行ったアンケートの結果を提示した。(日経BPコンサルティング調べ「デジタル・アナログ領域のマーケティング施策実態調査(第6回)」)
「デジタル施策」「アナログ施策」「デジタルとアナログを組み合わせた施策」のそれぞれについて、売り上げ効果に対する満足度を質問したところ、組み合わせ施策の満足度が年々高まっていることがわかった。
デジタルは一通りの施策を小さく試せる点が強みである一方、効果のある施策を取捨選択するとターゲットは狭く、手数は少なくなってしまう。このことから椎名氏は「施策をスケールさせるためにはデジタルとアナログを組み合わせ、両者のベストバランスを探るべき」と語った。
若年層に効く、紙のDMによる行動喚起
大木氏は次いで日本郵便、早稲田大学、富士フイルムが行った産学協同実験のデータを紹介した。同じ情報が記された紙のDMとEメールを用意し、送る順番を「紙→Eメール」「Eメール→紙」の2パターンに分けて、受け手の反応を測ったものである。
特筆すべきは、若年層の反応だ。デジタルネイティブに分類される30代以下の受け手は、紙に対して嬉しさや温かみなどの好ましい感情を持っている。日本ダイレクトメール協会でも同様の調査を行ったところ、20〜30代における紙のDMの行動喚起率は全年齢平均の2~3倍という結果が示されたという。
グループインタビューの結果によると、物心がついた頃からEメールやSNSのコミュニケーションが主流だった若年層にとって、紙のメディアは「立派なもの」「お金のかかったもの」という特別な印象を与えるようだ。逆に、Eメールについては「プロモーション関連のEメールは捨てアカウントで登録するので見ない」というシビアな声も聞かれた。
「脳科学の実験では、デジタルコミュニケーションは主に左脳を刺激し、情報伝達に適しているとされる一方、紙の印刷物は感情表現を司る右脳も同時に刺激すると言われています。紙はエモーショナルな働きかけに強いと言えるのではないでしょうか」(椎名氏)