“普通”のスマートフォンユーザーを幅広くカバー
MarkeZine Day 2020 Springに登壇したLINE インサイトリサーチ室 副室長の地福節子氏は「LINEという大規模なコミュニケーションインフラで調査を展開することで、これまでの調査の概念が変わり、新しい調査の未来が拓けてきました。今日はその具体例と今後の未来について説明したいと思います」と話し、講演を開始した。
LINEリサーチの特徴はなにか。一言でいうと、きわめて一般的なスマートフォンユーザー、どこにでもいる生活者の行動や考えを明らかにできることだ。
地福氏は、その“普通さ”について、自社調査結果のデータや総務省の人口推計を用いて、次のように説明した。
まずはネットユーザーの行動について、LINE社の訪問留置調査によると週に1回ネット環境にアクセスするネットユーザーのうち、デバイスが「スマホのみ」というユーザーは全体の49%、「スマホとPC」というユーザーは44%。つまり、ネットユーザーの98%は週1回以上スマートフォンからアクセスしているということになる。また、2017年から2019年にかけてのネットユーザーの推移を見てみると、「スマホのみ」のユーザーの割合が増えていることがわかる。
「ここ数年で、デジタル広告費がPCからモバイルへとシフトしていることからも、消費者の行動のメインはすでにモバイルに移行したと言えるでしょう」(地福氏)
次に、総務省が発表している日本の人口では、生産年齢人口と呼ばれるアクティブな15~64歳が全人口の6割を占め、7,545万1,000人とされている。LINEの月間アクティブ数である8,300万人は、これら生産年齢人口の数を上回り、さらに上や下の年代のスマートフォンユーザーに広がっているものである。つまり、しばしば調査の対象となりうるような年代は、すでにほぼカバーできている媒体であるといえるだろう。
調査が届きにくい若年層の貴重な声も
現在、LINEリサーチには2つのメニューがある。LINEユーザーをモニターパネルとし、このモニターを対象に調査を行う「モニター型リサーチ」と、8,300万MAUの全LINEユーザーを対象に幅広く調査を行う「オープン型リサーチ」だ。
「モニター型リサーチ」のモニター参加者は、現在約506万人で男性と女性の比率は1:2。注目すべき特徴は10~20代の若年層が53%を占めていることで、高校生にしぼると「5人に1人がパネルになっている」という。
また、他社パネルへの登録割合が少ないことも特徴のひとつだ。一般的な調査会社の場合、モニターの4分の3ほどが「他社のモニターにも登録している」状態で、さらには「5社以上登録している」というモニターが21%もいる。
これに対しLINEリサーチのモニターは、他社パネルへの未登録者が全体の7割、ほか1社登録しているモニターが約16%。したがって、調査慣れしていないフレッシュなモニターを対象に調査を行えるという利点がある。
一方「オープン型リサーチ」は、LINEユーザー全体に対して調査できるもの。不特定多数を対象に、大規模なアンケート調査を行うことが可能だ。
調査対象への接触方法は、Webや紙に掲載したQRコードからアンケート画面へ誘導したり、SNSやメールをタッチポイントに使ったり、特定の居場所にいるユーザーをLINE Beaconで検知してメッセージを送るという方法もある。
自社のLINE公式アカウントがあれば、友だち追加を促したり、アンケートの謝礼としてユーザーにLINEポイントを付与したりすることも可能。「個人情報をやり取りせずに、インセンティブを付与できるのも利点です」と地福氏はメリットを挙げた。