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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングとブランドのシアワセな関係 〜アフターデジタル時代に向き合うマーケターに向けて

「マーケティング=販売促進」ではない。サブスクに見る今後求められるマーケティング活動

マーケティング=ビジネスモデル、その理由は?

 デジタルが普及した現在、サブスクリプションサービスの登場によって音楽の楽しみ方は様変わりしました。

 サービスによって聴くことができる楽曲数やアーティストが異なるので、一人のユーザーとしてどのサービスに加入するかは非常に悩ましいところです。これはサービス提供側からすると、ビジネスの成功・失敗を分ける重要なポイントなので、自社サービスを選択してもらえるように当然対策をしています。

 一定期間を無料で利用できるように設定したり、無料で利用できるコンテンツを用意したり、いわゆるお試し機会の提供です。

 お試し期間を設けることでサービスの魅力を体験してもらい、納得した上で課金してもらう。これはいうまでもなく、デジタルが可能にしたことです。現在の音楽サブスクリプションサービスの多くは以下のような形になっています。

(1)提供するコンテンツ(楽曲)がデジタル化されているので、ユーザーに届けるためのコストが低く抑えられた結果、お試しでのコンテンツ(楽曲)提供が容易になった。

(2)ユーザーはお試し(無料)でコンテンツを体験し、お試し期間中にユーザーに提供した価値が、その後のサービス利用の可否を決める。

(3)価値に納得したユーザーは、利用料を払ってサービスを継続利用する。

 売り上げを計上できるプロセスは(3)ですが、このサービスが成功するかどうかを決定する重要なプロセスは(2)です。

 マーケティングを「販売促進活動」として捉えると、その視点による最適化は、(3)を如何に効率的に増やすか、になります。

 マーケティングを「価値を創造する交換過程をつくる活動」と捉えると、その視点による最適化は、(2)を中心にしたプロセス全体、価値提供のあり方の構築にまで及びます。そして後者は、ビジネスモデルを考えることと同じ。つまりマーケティング=ビジネスモデルになります。

大切なのは売ることではなく良く利用してもらうこと

 そもそも財やサービスが存在する理由は、それを利用してもらうためです。そして利用してもらうためには、ユーザーに手にしてもらうプロセス、提供側からすれば売るというプロセスが必要だった、ということです。

 企業は、財やサービスの利用によって得られる価値の提供が本質的な目的で、売ることはその過程の一部、つまり目的ではありません。本来企業が注力するべきは、財やサービスをユーザーが活用しているシーンのはず。まさにマーケティングは価値ありき、です。

 財やサービスそのものが簡単にはデジタル化できないもの、たとえば食品や飲料、自動車などの業界でも、サブスクリプションサービスは増えてきています。この場合、企業が売っているのは、財やサービスそのものではなく、それらを利用することです。

 自動車のサブスクリプションサービスで売っているものは、自動車そのものではなく、自動車を利用する環境、自動車(Product)だけでなくその維持に必要な整備、安心して利用するために必要な保険、そして税金の支払いなどを含んでいます。

 このところ、ファンベースマーケティングやロイヤリティマーケティングなど、ユーザーの利用シーンに注目したであろうワードを良く目にするようになってきました。これらは、マーケティングを「価値を創造する交換過程をつくる活動」として捉えると、マーケティングの一部を捉えた事象だということが理解できます。

 そして、ファンベースマーケティングや、ロイヤリティマーケティングは、売ることを目的としないことによってはじめてその可能性が拡がる、ということも。

「価値を創造する交換過程をつくる活動」としてのマーケティングをどう評価するか

 売ることを目的としないマーケティング活動の評価はどうあるべきか。マーケティングは価値ありき、であることは良しとしてその活動をより良くしていくにはどうすればいいのか。

 それに対する僕の答えは、ブランドとして評価をすること、です。そしてマーケティング活動をより良くしていくために必要なことは、ブランド開発だと考えています。

 この連載もいよいよ終盤に差し掛かってきました。次回はブランド開発と管理について、オプトが2019年に実施した自主調査の結果も踏まえ説明していきます。

 それでは。

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マーケティングとブランドのシアワセな関係 〜アフターデジタル時代に向き合うマーケターに向けて連載記事一覧

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この記事の著者

鈴木 智之(スズキ トモユキ)

株式会社オプト エグゼクティブ・スペシャリスト ストラテジスト 兼 マーケティングストラテジー部 部長
 広告会社のストラテジックプランナーとしてクライアントのマーケティング支援に従事、ブランド資産を活用した戦略構築に強み。2016年オプト入社。CSV/カテゴリイノベーションの実現を支援するストラテジーをテーマに活動。201...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/03/31 09:00 https://markezine.jp/article/detail/33071

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