失敗3.自社の商材、それにともなう消費者行動を踏まえていない
そもそも企業によって扱う商材やサービスは異なるため、同一のKPIを設計することはできない。また、ある企業は粗利を重視するが、別の企業はリピート数を重視するなど、企業の状況や直面する経営課題も一律ではない。
このようなことを鑑みると、一般的にKPIの例に挙げられがちなフォロワー数やエンゲージメント数などは、本当に最適なROIを導き出し、KGIにつながるだろうか?
たとえば、人に話しにくいコンプレックス商材を扱っている企業が、自社商品に関するUGC(クチコミ)数をKPIに設定したところで、ROIが他の施策よりも優れていることは少ないかもしれない。SNS上でコンプレックス商材を使っていることを公言するユーザーは、実際には多くないはずだ。自社の商材特性にともなう消費者行動を把握しないままKPIを設定することは、オススメできない。
誰もが知るような大企業の「中の人」によるアカウント運用を成功事例として模倣し、自社の規模感やSNSマーケティングを行う目的も整理せず、とりあえずキャラクターを作ってインプレッション数をKPIにするケースもよくある。
ただ、成功した企業アカウントが注目されるに至ったのは、アテンションを獲得するべくSNSマーケティングに本格的な投資をしたり、特別な施策を練ったりする必要もないほどに知名度の高い企業が運用しているからである。こうした前提を忘れてしまっていては、同じ取り組みをしても同様に報われるとは限らない。
また、フォロワー数の多さが仕事に直結する可能性があるタレント業やインフルエンサー業を見本に、自社のKPIにフォロワー数を置いても、そもそもフォロワーの数が売上や粗利、市場シェアといったKGI達成の貢献につながらないのならば、意味がないだろう。
重要なのは、自社の商材やサービスの特性やそこに付随する消費者行動を、まずは把握しておくことである。
たとえば、コスメやファッションなど消費者がSNS検索をしやすい、クチコミを出しやすい商材を扱っているのであれば、クチコミの力を有効活用できるような指標を置く必要がある。
外食産業など、競合他社との争いが激しく出回る情報量が多すぎる場合は、消費者の間で話題化され存在感を示すことが重要だろう。
自社商品を割く棚が大きいほど売れている実績があるならば、流通対策となるKPIを考えることが大切だ。
このように、自社の商材やサービスの特性とそれ特有の消費者行動を踏まえたうえで、「どうすれば消費者行動を増幅できるのか」「そもそも自社の商材やサービスに関する消費者行動はSNSで増幅できるのか」といった観点をベースに、本当に必要なKPIを見極めて設計しよう。
真に成果の出るところにリソース集中できるKPI設計を
正しいKPI設計が行われないと、貴重な広告費を無駄にしたり、メンバーに不必要な努力を強いてしまったり、本来得られたはずの機会を損失してしまったりなど、自社にリスクや弊害をもたらすかもしれない。
せっかくSNSマーケティングに取り組むのであれば、真に成果を出すところにリソースを集中させるほうが良い結果を生むはずである。
記事中で紹介した三大失敗事例の考え方をベースにKPIを設計していないか、今一度振り返ってもらい、自社の業績がよりよくなるような施策のヒントやアイデアに活かしてもらえれば幸いだ。