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PDCAでは遅すぎる!?“OODAループ”で企業アプリの最速グロースを支えるロケーションバリュー

 多くの生活者の手の中にスマートフォンが行き渡り、皆通勤・通学や空いた時間にスマホアプリを楽しむのがいまや当たり前になった。一方で、その中にはたくさんのアプリがダウンロードされており、企業アプリは使われないまま埋もれてしまう可能性もある。リリースしたアプリをしっかり使ってもらうには、どのような工夫が必要なのだろうか。本記事ではNTTドコモグループでアプリ開発支援サービスを展開しているロケーションバリューの小嶋利典氏に、使われるアプリにするための3つのポイントについて聞いた。

1日あたりのアプリ利用は平均2時間20分超え

――はじめに小嶋さんのご担当業務についてお教えください。

小嶋:企業や自治体を対象としたアプリ開発支援サービス「ModuleApps」のプロダクトマネージャーを担当しています。「ModuleApps」は2011年10月にサービスを開始し、企業のスマートフォンアプリがまだ一般的ではなかった頃から、アプリの企画・開発からリリース、運用までを一貫して支援してきました。私自身は、これまで50種類ほどのアプリの立ち上げに関わり、今はリリース後のグロースハックもお任せいただいています。

株式会社ロケーションバリュー コミュニケーションデザイン部 プロダクトマネージャー 小嶋利典氏
株式会社ロケーションバリュー コミュニケーションデザイン部
プロダクトマネージャー 小嶋利典氏

――早速ですが、現在企業はアプリの開発・運用においてどのようなことに悩んでいるのでしょうか。

小嶋:2~3年前までは「まずはアプリを作りたい」というご要望が主流でしたが、ここ1~2年は「アプリを使って販促効果を出したい」「利用率を高めて来店を促進したい」など、結果を出すためのご相談が増えてきました。

 現在、日本のスマートフォン普及率は80%に及び、20~40代に限れば95%もの人が利用しています。一人あたりの1日のスマホ利用時間平均は3時間46分となっていますが、そのうち92%にあたる3時間28分をアプリの利用に費やしている状況です。

 そうした中、企業アプリを使うユーザーは、ロイヤルカスタマーの方々が中心です。2割のロイヤルカスタマーがその企業の8割の売り上げを作ると言われていることから、その方々とのコミュニケーションを大切にしたい企業がアプリ運用を強化していくのは、当然の流れと言えるでしょう。

企業アプリDLの目的、第1位は?

――なるほど。ユーザー側は、企業アプリにどのようなことを期待しているのでしょうか。

小嶋:当社が行ったアンケートの結果では、ユーザーがアプリをダウンロードした目的として最も多く挙げていたのは、「クーポンなどの特典が欲しい」。次いで「ポイントカードの代わりとして使いたい」と考えています。それから「キャンペーンや新商品などの最新情報を知りたい」という回答も多かったですね。

小嶋:つまり大前提として、複雑なもの、多機能なものよりも基本的な機能をわかりやすく提供することが大切です。私たちがアプリのグロースを支援させていただく場合も、こうしたユーザーのニーズを把握するために、実際のアプリの使われ方やリアルなお買い物体験のユースケースについてヒアリングします。さらに、ユーザーインタビューなどを通じてニーズを掴んでいます。

使われるアプリの3箇条

――では小嶋さんの考える、使われるアプリにするための方法を具体的に教えてください。

小嶋:使われるアプリにするためには3つのポイントがあると考えています。

 1つ目は、サービスや買い物体験をより良くするためのアプリを作るということ。ロイヤルティプログラムや、決済、クーポン、購入履歴からの再購入や座席の予約機能、商品の在庫確認機能など企業のサービスをアプリによっていかに便利にするか、という目線が必要です。

 2つ目はシンプルかつ使いやすいアプリにすること。ユーザーがアプリを削除する理由として「操作しにくかったから」「起動に時間がかかったから」という意見が圧倒的という調査結果もあります。

 企業側としてはどうしても「あんな機能もつけたい」「こんなコンテンツも提供したい」と欲張ってしまいがちですが、ユーザーからすると選択肢が多すぎてわかりにくく重たいアプリは次第に使わなくなってしまうのです。

 そして3つ目は、リリースしてからのグロース(アプリの成長)にしっかり投資すること。店舗を持っている企業であれば、店頭でアプリの告知ポスターを貼る、ダウンロードキャンペーンを行う、割引クーポンをつけるなど、連動施策をしっかり行うことが重要です。私たちはこの3つを簡単にわかりやすく実現できるサービスとして、「Module Apps」を提供しています。

機能の柔軟な組み合わせで、最短1ヵ月でアプリ作成が可能

――「Module Apps」の強みはどのような点にあるのでしょうか。

小嶋:各企業のニーズに合った最適なアプリを最短経路で制作できる点です。

 通常、クーポンやプッシュ通知などの機能をゼロからフルスクラッチで作ると、時間もコストもかかりすぎてしまいます。しかし「Module Apps」は、業態や業界ごとによく利用される機能が既に用意されているため、モジュールにより各機能を組み合わせるだけでアプリを作ることができるのです。

タップで拡大
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小嶋:もちろん、管理画面やサーバーもすぐに提供することができるので、標準的な機能だけでリリースしたいという場合は、最短1ヵ月程度で企業アプリが作れるようになっています。また、店舗数が多い企業の場合は、マーケティング担当者、エリアマネージャーと店長でアプリの権限を分け、使える機能を制限するといったきめ細かな設定をすることも可能です。

PDCAでは遅すぎる!?グロースは“OODAループ”で

――多くの企業が課題を抱えているアプリのグロース、リリース後のアップデートに関しては、いかがでしょうか。

小嶋:以前はいわゆるPDCAを回す手法が主流でしたが、それでは時間がかかりすぎるということで、最近アプリ開発の現場では「OODA(ウーダ)ループ」という方法を取り入れつつあります。これは、短期間に何回も「Observe(状況の観察、情報収集)」「Orient(状況理解、判断)」「Decide(意思決定)」「Action(実行)」を回していくというグロースハックの手法です。

 たとえばTwitter公式アプリの場合、以前は2週間に1回グロースハックのループを回していたのですが、あるタイミングから週に10回グロースハックを行うようになりました。その結果、MAUが急激に伸びました。

 この考え方は海外では主流になりつつあって、Netflixなら年間1,000回、Googleのアプリなら年間7,000回ものグロースハックを行っています。FacebookやInstagramのアプリも、ものすごい回数の学習・改善を行っているんです。私はこの手法を、日本企業のアプリグロースでも定着させたいと考えています。

――それほどの回数のグロースハックを、どのように実施しているのか気になります。

小嶋:当社ではシリコンバレーの「Amplitude(アンプリチュード)」というツールと提携し、分析で活用しています。これはあらゆるプロダクトの成長に必要な行動分析を行うツールで、たとえば「マジックナンバー」をデータから導き出すこともできるツールです。

 アプリには、たとえばTwitterならアカウントを作ったらまず5人フォローすると使い続けてくれる、Facebookなら10日以内に7人と友だちになると使い続けてくれるという「そのプロダクトを継続的に使ってもらうための鍵となる数字」があるんです。それをマジックナンバーと呼びます。

 当社でお手伝いしている飲食企業様のアプリでは、ある機能を3回使ってくれた人は、アプリを使い続けてくれることがわかっています。こうした情報は、これまではデータサイエンティストの膨大な時間をかけた分析作業で導き出していたわけですが、Amplitudeによって簡単に導き出せるようになりました。ModuleAppsはこのAmplitudeと連携することによりまず誰もがまずデータを見て分析できる環境を提供しています。

 カスタマージャーニーについても、データドリブンで導き出せるようになっていきます。我々は、このAmplitudeを使ったアプリの“勝ちパターン”をModuleApps以外のすべてのアプリでも使っていただけるような取り組みも実施しています。アプリのグロースハックに課題を感じている方がいたら、ぜひご相談いただけるとお手伝いできるかと思います。

カスタマーの行動を生み出すアプリの導線

――ロケーションバリューさんが手掛けたアプリには、どのようなものがありますか。

小嶋:まずは生活雑貨店のPLAZA(プラザ)さんのアプリを紹介したいと思います。20代女性をメインターゲットにしたアプリで、EC商品を閲覧・検索できる機能を搭載したアプリにしました。

 トップ画面では、PLAZAさんのメインターゲットの特性を活かし、新商品を無限に見られる作りにして、興味・関心を誘うようにしています。

小嶋:PLAZAさんの場合、店舗で商品購入する方が多いため、会員登録の煩雑さによる離脱やレジ前での混雑を防ぐため、会員登録をしなくても、アプリをダウンロードした後、簡単に会員証が発行される仕組みも搭載しております。そこで貯めたポイントをユーザーが使用したくなった時にはじめて会員登録をしてもらうようにしました。

 ECについては前述した新商品の訴求だけではなく、検索機能をネイティブ化し検索性を向上させただけではなく、オンラインストアで興味を持った商品を店頭で探す方も多いため、アプリで商品のスクリーンショットを撮りやすくする機能を搭載し、OMOのアプリとしての使い勝手も考えています。

 それから、イオン九州さんのアプリの場合は、全社をあげてアプリを活用した販促に取り組んでいます。このアプリの場合、店舗にチェックインすると必ず「WAON POINT(ワオンポイント)」(イオングループ共通ポイント)が付与されます。これにより、お客様の来店履歴を基に様々な販促施策を展開できるんです。

小嶋:ほかにも毎日「4時からクーポン」というものを発行していて、特定の商品が4時以降5%引きになるため、ユーザーはアプリを立ち上げてその日のお買い得品をチェックしてくれるようになります。このように、アプリを全社的に重要なプロジェクトとして、店頭の販促施策まで結びつけると、ユーザーにも定着しやすいですね。

その企業にとってふさわしいアプリの在り方を追求

――どちらの例も、シンプルな機能でありながら使い勝手が考え抜かれていると感じます。

小嶋:そうですね。アプリ開発というとどうしてもシステム開発寄りの考え方で、搭載したい機能ありきで考えてしまいがちですが、実際に使うのは来店するユーザーだったり、その企業のカスタマーです。すべてのアプリにリッチな機能が必要なわけではないですし、あらゆる企業のユーザーがゲーミフィケーションを求めているわけでも豊富な記事コンテンツを読みたいわけでもありません。

 一番大切なのは、ユーザーにより良い体験を提供すること。それは店頭における接客サービスと同じことだと思うんです

 先日、私たちの「ModuleApps」を使って制作したアプリの累計ダウンロード数は4,000万を突破しました。企業のアプリ制作に特化したノウハウを持ち、各企業が目指したいゴールに合わせてアプリの全体像や必要な機能をご提案できるという面では、企業様のベストパートナーになれるのではないのかと考えています。アプリ開発やグロースに課題を抱えている企業様は、ぜひご相談いただきたいと思います。

――本日はありがとうございました。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/09/29 11:00 https://markezine.jp/article/detail/33089