事業成長を約束する、6つのグロースメソッドとは?
では、グロースメソッドとはどのようなものか。三浦氏はグロースメソッドに必要な6つのステップを挙げた。
1つ目の「ファネル」は、先ほどの成功事例のように数と率の観点から顧客の行動プロセスを操作可能な変数に変えていくということ。
売上に至るまでに、顧客はどういった行動をたどっているのかをすべて変数化していき、どの数字を改善すると売上が上がるかという方程式を作り上げていく。先ほどの成功事例の場合も、ファネルの可視化からスタートしていった。
たとえば、小売業で特定の商品を売りたい場合、商圏人口から認知率を出し、そこから来店率、入店してからその商品棚の前の流入率、視認率、手に取る率などをすべて数値化していく。そのうち、どの変数の改善が売上向上に一番寄与するのかを考えていく。
2つ目の「ボトルネック」は、売上増加を阻害するボトルネックを特定するフェーズ。たとえば、ECサイトのユニークユーザー数が1万人いたとして、そのうち購入者が100人だとしたら、CVRは1%となる。
そして、その1%を分解していく。商品閲覧率が80%で、そのうち商品選択率が10%あり800人がカートに入れているが、実はカート落ち率が高く最終的に100人になっていたことがわかった場合、ボトルネックはカート落ちだと特定できる。
ボトルネックは改善可能性が高く、改善時の売上インパクトが大きい。どの企業でも必ずボトルネックはあるので、ここを改善すれば売上を上げることができる。
3つ目の「マイクロスコープ」は、顕微鏡で覗いたかのようにデータを細かく見るということだ。ボトルネックの不調要因について、解像度を上げて分析していく。
先ほどのECサイトの例において、どういう人がカート落ちしているのか、ユーザーの属性別や行動別、どんなページを見ている人が多いか、どのくらい滞在しているのか、ページの遷移はどうなっているのか、過去の購買額といった行動履歴などを見ていく。また、特定のセグメント別に分解していき、傾向を把握していく。
こうした解像度の高い分析をするためには、データの統合をしていくことが望ましい。最近はデータの統合基盤としてCDPやDMPがあるが、これらを活用すると様々な切り口でデータを見ていくことが可能になる。
4つ目の「リバース」は、ボトルネックの逆側の数字に注目するというフェーズだ。たとえばサイトからの購入者が1,000人いて、会員登録を促したときに100人しか登録しない場合、登録率は10%ということになる。リバースではこの逆の数字、つまり会員登録しない90%の理由を徹底して分析していく。
先述の成功事例の場合は、このフェーズでは、すぐに次のレッスンを予約しない理由をインタビューなどで聞いていった。その結果、「忘れてしまうから」「調べるのが面倒だから」といった理由が出てきたことから、次回予約の案内を複数回にわたって送るといった施策につながった。
5つ目の「アンリフューザブルオファー」は、絶対に断れない提案だ。数字が上がらない理由を徹底的に考え、その理由を潰していくという一番大事なフェーズである。
引き続きサイトの会員登録数を例にすると、購入者のうち90%が会員登録しない理由に注目し、アンケートやヒアリングなどを行う。そして、そこから一番大きな理由を見つけて、徹底的に潰していく。
たとえば、「今登録する理由がない」というのが一番大きな理由となっている場合、その場で会員登録すれば次回20%オフクーポンをプレゼント、後日登録の場合はインセンティブはなしといった仕掛けを作ることで、今すぐ会員登録する理由が生まれる。「相手の不買理由を潰していくことで購買率が高まる」ということ。
6つ目の「オペレーション」は、改善のための施策を実施して、徹底したKPIモニタリングを行うことだ。グロースしている企業のKPIモニタリングには、2つの特徴がある。
1つは、日次でKPIモニタリングをしていること。もし不調の数字があれば、そこに対してすぐに会議を開いて潰していく。
もう1つは、「アクションKPI」を設定しているということ。これは、結果としての指標を見だけではなく、その指標にインパクトを与えるような能動的なアクションやコントロールできるようなアクションについても計測していくということだ。
成功事例のスクール型の教材サービスの場合では、講師が予約を促すオペレーションをどれだけ実行したか、それを生徒がどれだけ受領したかというアクションもきちんと測っていった。