ネタ出しを毎日しているから「企画の基礎体力」が高い
中山:アイデアを出すときに、お二人が意識している考え方を教えてください。
原宿:制限があるほうがその枠内でアイデアが出やすい……というのはあるかもしれません。自由すぎても意外と思いつかないものです。
山口:『オモコロ』は案件依頼の有無に関係なく毎日更新してます。そのせいでネタを出す基礎体力は高いんじゃないかと。
中山:日頃から筋トレしてるようなものですね。
原宿:オモコロの企画でもスベることはありますけど、スベった企画はそもそも読んでる人が少なくて、面白かったものだけみんな覚えててくれるので、「スベった!」と感じてもあまり気にすることはないのかなと。ウケようがスベろうが打席に立ち続けるのが基本だと思ってます。
山口:僕はボヤっとテーマについて考えるよりも、具体的にじゃあこういうネタをやろう、こういうことを言おう、こういう写真が出た時にこんな文字が出てたら笑うだろう、というところまで考えるようにしていますね。
中山:それって学習や教育の賜物なんですか? その思考性を若手社員にどう植え付けていくんですか?
原宿:すでにできている人を採用しています。声をかけるのはほとんどがオモコロ出身者ですね。長年の付き合いで文化的土壌を共有できているので通じやすい。面白さの感覚がずれていない感じ。

<オモコロとは>
ゆるく笑えるコンテンツに特化した無料で読めるWebメディア。記事やテキスト、漫画やラジオなど多ジャンルに渡る不真面目な制作物を掲載している。人生のタメになることや、意味のあることは基本的に掲載されていない。
山口:その感覚も年月とともに変わってきてはいるんですけどね。僕らがバーグハンバーグバーグを始めた時と今やってることを比べると、笑いの質は変えてきていると思います。ずっと同じだとやばい、という感覚があって。
中山:飽きられないように進化し続けるって意味ですか。
山口:下ネタもそうなんですけど、昔は笑いで済んでいたものが今は通用しない……みたいなことってあるじゃないですか。なので、一線の置き場所はアップデートしてますね。インターネット人口の構成も変化していて、色んな価値観の人がいるので。
原宿:個人サイトの延長で、好き放題やっていても許されていた時代はありました。企業として色々案件をやるようになると、その辺は一定の線引きはしていかなきゃっていう……。自分の中でのちょっと嫌だなっていう感覚に、敏感に反応した方がいいなと感じる機会は増えましたね。
炎上の原因の1つは、ユーザーさんとの交流が少ないからかも
中山:炎上しないために気をつけていることはありますか?
山口:炎上したニュースを見たときに「なぜ炎上したんだろう」ということをきちんと考えるようにしていますね。
原宿:インターネットが好きなので、普段から仕事関係なく見ています。社内で良くも悪くも話題になっているコンテンツをチャットで共有して「この表現が反感を買ったのでは」「たしかにこれはまずいかも」と話しあったり。「こうすれば回避できたかな」と考えて、勝手に反省会を開くことも。
中山:外部の温度差を知らないまま、会議室だけで決まる案って怖いですよね。
山口:炎上してしまう原因の1つに、「ユーザーさんとの交流が少ない」というのはあるかもしれません。我々はオモコロを通じて自分たちのコンテンツへのフィードバックがダイレクトに返ってくるので、そのあたりの温度感がわかりやすい。
中山:コメントやSNSの言及を見ているんですか。
原宿:エゴサーチはこまめにして常に振り返ってます。こういうこと書くとこう思われるんだ、という細かい調整をかけてますね。追いついてない部分も一部あるかもしれませんが。

中山:外から見ると、さも楽しげにワイワイしているように見える会社だけど……。
原宿:それはそれでしているんですけどね。
中山:オモコロが燃えてもまだ自分たちが責められるだけだけど、それが案件になると大問題ですもんね。
山口:弁護士さんに内容チェックを依頼することもあります。この表現大丈夫ですか? とか、写真のこういう映り込みって問題ありますか、みたいな相談とか。心配されるクライアントさんもいらっしゃるので、「それはどうなの?」って聞かれたときにきちんと返せるようにしています。
中山:これまで問題になったことは?
山口:ほぼないですね。僕らの強みってソーシャルでウケる企画を考えるということのほかに、炎上回避能力もあると思ってます。ちょっと下品なこともやるけど、多くの人が不快感を示さないように細心の注意は払っているつもりです。
原宿:僕らはめちゃめちゃ怖がりなので、そのあたりは徹底的に……。ただ、ものによっては前例のないところに踏み込まないといけないこともあるので、その辺りの蛮勇は失いたくはないですけど。野生と理性のバランスですよね。