空港リテールを盛り上げる免税店価格比較アプリ
AIを活用した免税店専門価格比較アプリの登場も空港リテールを盛り上げる要因の一つと考えられる。
現在、北京の企業による「Jessica’s Secret」やアリババ・グループがローンチした「Fliggy Buy」など中国人向けのアプリが目立つ。
Jessica’s Secretは中国北京の企業が2015年にローンチしたスマホアプリ。世界40ヵ国以上の免税店の価格を比較することができる。対象となるプロダクトは、美容品やアクセサリーに加え、ガジェットも含まれている。
世界各国の免税店データを収集し、生活者向けには価格比較アプリを、企業向けには価格モニタリングサービスを提供している。免税店の時系列データも収集しており、AIを活用した価格変動予測などができるようだ。

価格比較アプリのサービスでは、世界中に提携ブランドがある。同社Webサイトによると、資生堂やエスティローダーなどが含まれている。
アプリの登録者数は100万人以上。1日のアクティブユーザー数は1万8,000人、月間では18万人に上るという。
アリババ・グループのオンライン旅行プラットフォーム「Fliggy」が2019年3月末にローンチした「Fliggy Buy」は、オンラインで免税店ショッピングができるサービス。オンラインで購入後、旅行先の免税店で受け取るという仕組み。現在初期段階で規模は小さいが、提携店舗や取り扱うプロダクトの種類を順次拡大する計画だという。
未来の都市は空港中心に広がる?アジア太平洋で激化する「Aerotropolis」競争
今後の空港リテールを考える上で「Aerotropolis」というキーワードは無視できないものになるかもしれない。空港を中心に広がる都市という意味だが、現在アジア太平洋地域でAerotropolis競争が激化しつつある。
オーストラリア地元紙Sydney Morning Herald(SMH)は2019年10月末の記事で、域内におけるAerotropolis競争の現状に触れている。
現在オーストラリアでは、シドニー郊外のバジェリーズ・クリークという地域にAerotropolisを建設する構想が持ち上がっている。1万1,200ヘクタールの広大な土地に空港都市を建設するというのだ。1万1,200ヘクタールはおよそ112平方キロメートルに換算される。日本の市町村でいうと、神奈川県小田原市(約114平方キロ)や大阪府高槻市(約105平方キロ)と同等の大きさとなる。
2026年の開業を目指す同プロジェクトでは、海外からの投資を誘致したい考えだ。しかしSMHによると、同プロジェクトの責任者サム・サングスター氏は、海外からの投資を誘致する上で、アジア太平洋地域ではシンガポールと韓国が強力な競争相手になるだろうと指摘したという。
このことからわかるのは、少なくともオーストラリア、シンガポール、韓国でAerotropolisが近い将来出現する可能性があるということ。また他の国・地域でもAerotropolis構想が進められていることも想定できる。実際、米コロラド州オーロラ市でもAerotropolis構想の議論が進められている。

Aerotropolisが通常の都市と大きく異なる点の一つとして、空港の稼働に合わせ都市も24時間稼働することが挙げられる。このときリテールはどのように対応すべきなのか。AmazonGoのような無人システムなのか、またはオンライン予約・ロッカー受け取りのような仕組みなのか。空港を中心にした未来のリテールはどのような姿になるのか、今から考えても早すぎることはないだろう。