人材とプロセスの最適化へ
キーノート終盤、ナラヤン氏は「デジタル変革はテクノロジーだけではなく人材やプロセスにも大きく関係し、企業の中で新たなDNAを生み出している」と述べ、企業におけるデジタル変革が進む過程で、新たに求められる人物像や働き方が生まれること、またそれに対する共通理解が必要になることを語った。
社内のデジタル変革についてはAdobe自身も例外ではなく、前年のAdobe Summitではまさに自社のデジタル変革を進めるために用いられた「データドリブン オペレーティングモデル(DDOM)」を紹介し、どのようにビジネスを再構築したかを解説していた。DDOMは、スタッフから経営幹部レベルに至るまで、顧客体験に影響を与える意思決定に、データによるインサイトが求められるようにするためのオペレーティングモデルだ。
Adobeではこの経験から、カスタマージャーニーの「発見」フェーズから「試用」「購入」「使用」「更新」に至るすべてのフェーズで顧客とのやり取りを理解するためのデータとプロセスを整え、すべてリアルタイムで行えるようにしたという。
「どの業界のリーダーも顧客体験管理(CXM)に特別な重点を置く必要があります。ここが、変革によって成長できるポイントです。今日、顧客体験管理に対する期待に応えるには、統合されたアプリケーションとサービスに、適切な人材と的確なプロセスを組み合わせることが欠かせません」(ナラヤン氏)
Adobeは、デジタル革新を人材とプロセス、「人」の観点から支援するものとして「CXM Playbook」をキーノートと同日に提供開始した。自己診断をすることで業界標準と照らし合わせ、その結果をベースにCXM実現へのロードマップを作っていけるサービスだ。

「幅広くオープンなエコシステムと創造性、顧客中心型の文化が組織全体に求められます。この新たな現実の中で成長していくためにはプラットフォーム、製品、パートナー、そして人々の力を結集して、自社固有のプレイブックを開発する必要があります」(ナラヤン氏)
このAdobeの新たなサービスが示すのは、顧客にとってより良い体験を提供するためにテクノロジーの力が必要とされる中で、それを使う人の力量もまた試されているという状況だ。デジタルビジネスの急速な変容に対応をしなくてはならない企業に、Adobeもまた伴走し続けるという決意を語り、ナラヤン氏はキーノートを締めくくった。
「変革の旅は、休むことなく続き、この環境の中では加速する一方です。Adobeの経験を、お客様の強みとしてご活用ください。Adobeの製品、プラットフォーム、パートナー、プロセスが顧客体験管理のメリットを活用するのに役立ちます。Adobeはお客様が、顧客体験をビジネスの中心に据えるためのガイド役であり、パートナーです」(ナラヤン氏)
重要性が高まるデータガバナンスを日本でも
ここまではキーノートの模様から、Adobeが世界に向けた発信した重要トピックを伝えてきたが、日本市場においては今後どのような展望を描いているのだろうか。MarkeZineでは、同社日本法人のデジタルエクスペリエンス営業本部において、プロダクト エバンジェリストおよびシニア ソリューション コンサルタントを務める安西敬介氏から、カンファレンス公開後の反響と合わせてコメントをいただいた。
「(今年のカンファレンスは)オンライン化したことにより、グローバルで対面式のイベントより多くの幅広い方に視聴いただいています。今年は2万3千人の来場者を見込んでおりましたがオンライン化により登録者は10万人を超え、現在までに199ヵ国以上から45万回以上アクセスされている状況です。
今年のAdobe Summit 2020でもキーワードとなっているCXMを実現していけるよう、プラットフォームはもちろんのこと、CXM Playbookも活用した人や組織のデジタル変革を、パートナーの皆様と一緒にサポートしてまいります。
その大きなポイントとして日本では、昨年北米でリリース済みのAdobe Experience Platformを提供できるよう準備をしています。GDPRやCCPAといった個人情報を大切にする法令がグローバルでも動いている中、企業が顧客から預かっているデータをしっかりと管理するデータガバナンスの重要性も高まっています。このようなプライバシーに配慮した形で、リアルタイム性をもったコミュニケーションを実現できるよう、これら製品の展開を日本でも進めてまいります。
もちろん、Adobe Experience Platformだけでなく、1月にリリースを行い日本でも提供を開始しているAdobe Experience Manager as a Cloudをはじめ、Summit で発表された製品や機能を順次、ご提供していく予定ですのでぜひ楽しみにして頂けたらと思います」(安西氏)