CIOとCMOの協力が成功に導く
ここまで顧客一人ひとりに基づいた体験の重要性を説いてきたナラヤン氏は、その中で起きている変化、デジタル上とは異なる観点での成功の秘訣にも言及した。企業はシステムを顧客中心に設計しようと取り組んでおり、組織の在り方が変わりつつあるということだ。
「Adobeが見いだした、最も成功しているデジタル企業のすべてに共通する要因とは、CIOとCMOの間の強力なパートナーシップです。ここ10年はそれが顕著でした」(ナラヤン氏)
CMOは、マーケティングとコミュニケーションの専門家として、カスタマージャーニーの知識を提供するポジションだ。一方CIOは、システム構築やデータ統合、ビジネス継続性に関する課題を担当する。両者間の組織横断的なやり取りはあまりなかったというのが、ナラヤン氏の語る「変化」以前の考え方だ。
「ITはより顧客中心に、マーケティングはよりデータ主導になりつつあり、リーダー達はより密接に関わり合っています。実際、最高のCMO/CIOパートナーシップによって企業は魅力的な顧客体験を大規模に提供できるのです。経営陣が顧客中心の概念を共有し、連携が取れていることが重要です」(ナラヤン氏)

ばらばらのプロセスを継ぎ合わせる苦労は非生産的
一方、このような連携が生まれる中で多くの企業が解決に乗り出した課題についても触れられた。多くの日本企業にも存在し、社内の連携を阻害している「共通点のないシステム」や「サイロ(縦割り)化したデータ」だ。ナラヤン氏は「ばらばらのプロセスを継ぎ合わせようと苦労している」と現状を理解しつつも、「最新技術を駆使した顧客体験を、老朽化したインフラで提供することはできない」と主張した。
ナラヤン氏がこのように主張するのは、Adobeで行ってきた開発が、まさにこれらの課題をより効果的に解決するためのものだったからだ。同社が提供する顧客体験のための製品・サービス群「Adobe Experience Cloud」の進化においては、課題解決への光明とナラヤン氏が重要視するエコシステムの活用に向けた努力の成果が見られた。それは一つのプラットフォームへの統合とより効率的な連携だ。
従来もアプリケーション同士の連携は可能だったが、これらすべてがプラットフォーム「Adobe Experience Platform」の上に統合されたことにより、ここを通じてより効果的な連携が可能となる。さらにその間に「Service」レイヤーを持たせることで、Adobe Experience Cloudだけでなく外部ソリューションとの柔軟な連携や、自社のビジネスに合ったAI活用が可能になる。

自社のビジネスに合ったAI活用を可能にする。
「Adobeでは、業界でも最も包括的なアプリケーション群とサービスを提供して、BtoB/BtoCを問わずにカスタマージャーニー全体を調整できます。完全に統合されたAdobe Experience Cloudによって、収益化や獲得から更新に至るまで、あらゆることを具現化できるので、企業は優れたエクスペリエンスを提供する力を備えることができます」(ナラヤン氏)
別セッションのアニール・チャクラヴァーシー氏の解説によれば、同プラットフォームは4段階の働きによって顧客体験の提供に貢献する。各アプリケーションを統制し、前述のReal-Time Customer Profileにより顧客のインサイトを提供。さらにAI/ML(Machine Learningの略、機械学習)によって扱いやすいデータに加工し、リアルタイムな連携を可能に。実際の各チャネルにおける顧客体験へとつなげる。
