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「エコラベリング」が店舗リテール復活のカギになるか?

英国消費者の行動変化を起こした「アッテンボロー効果」

 英国の消費者市場が変わりつつあることは、他の調査レポートにも如実に示されている。

 ロンドン拠点の大手調査会社Mintelのレポート(2019年5月)でも、エシカル食品・飲料支出が2018年に82億ポンド(約1兆1,700億円)と2013年の57億ポンド(約8,100億円)から43%も増加したことが判明。この傾向は今後も続き、2019〜2023年は17%伸び、96億ポンド(約1兆3,700億円)に達すると予想している。

 同レポートによると、英国消費者の83%が食品・飲料製品を購入する際、「エコ認証された製品を購入した」と回答。エコ認証が消費者の意思決定に大きな影響を与えていることを示唆するものとなっている。

 同レポートが英国の消費者意識を変化させた要因の1つに挙げているのが「アッテンボロー効果」だ。この言葉は、動物学者、植物学者、作家、ナレーターなど多彩な顔を持つBBCの著名プロデューサー、デイビッド・アッテンボロー氏に由来するもの。

 同氏は、BBCのドキュメンタリー番組「Blue Planet Ⅱ」(2017年公開)で世界中の海と海洋生物を捉えた内容を取り上げており、同番組は英国だけでなく世界的な反響を呼んだ。海の壮大さや美しさを伝える作品だったが、同時に人々に海洋プラスチックごみ問題の深刻さを想起させ、消費を含め日々の行動を変えるきっかけになったと見られている。

 Mintelの調査では、英国においては67%の消費者がプラスチック利用を減らす努力をしていると回答。また60%がスーパーで買い物をする際、肉や魚を入れる容器を持参しても構わないと回答するなど、自身でプラスチック利用を減らす努力をしている消費者は少なくないことが判明。

 一方、83%がリテール側にもパッケージの無駄をなくす努力を求めていることが明らかになった。環境配慮を怠ってしまうとボイコットリスクが高まる可能性がある。48%の消費者が環境に対する価値観などを共有できるブランドをひいきにすると回答。この割合は25歳以下だと56%に高まる。反対に、33%が既に環境配慮などを怠ったブランドの商品を買わなくなったと回答。25歳以下では43%がそうしたと回答している。

英国百貨店「エコラベリング」で消費者にアピール、課題も多い

 消費における環境インパクトを最小限に抑えたいと考える消費者が増加している今、リテールブランドはどのような取り組みを行うべきなのか。1つは「エコ認証(エコラベリング)」によって、販売する商品が「サステナブル」「エシカル」であることを消費者に伝える取り組みだ。

 これはVogue Business誌が2019年12月13日の記事で特集を組むなど、アパレル業界でも注目されるホットトピックになっているようだ。

 英国高級百貨店Selfridgesは2017年に「Buying Better」というエコ認証取り組みを開始。ヴィーガン系美容商品にはベージュ色のタグ、サステナブルレザー商品にはグレー色のタグ、製造過程で節水している商品は水色タグなどを付け、ひと目で商品が「どうサステナブルなのか」をわかるようにしている。

Selfridgesの「Buying Better」タグhttps://www.selfridges.com/GB/en/features/info/sustainability/buying-betterourproductsandpartners/(タップで画像拡大)
Selfridgesの「Buying Better」タグ(タップで画像拡大)

 Selfridgesが同社顧客を対象に行った独自調査では、72%が取り扱いブランドの持続可能性に関する情報を知りたい、また69%が個別商品の情報を知りたいと回答。また86%がリテールブランド側も持続可能性に関してコミットメントを示すべきと考えていることが明らかになった。

 Selfridgesはエコ認証の他にも、同社がサステナブルであることを証明するための取り組みに力を入れている。2016年には取り扱い美容商品からマイクロビーズを排除、また2017年にはグリーン電力への移行や飲食店におけるプラスチックストローの廃止などを敢行。2019年には独自ブランド商品におけるパームオイル利用を廃止するなど精力的に取り組みを続けている。

 Selfridgesの事例からは、店舗リテールはサステナブルな取り組みと「エコ認証」を融合させることでEコマース時代においても優位性を発揮できる可能性があることを垣間見ることができる。

 ただしSelfridgesのエコ認証は「独自認証」の事例であることに留意が必要だ。通常、レインフォレスト・アライアンスのように第三者のエコ認証を使うことが多い。すでにエコやエシカル分野で信頼を確立したNGOなどの組織が与える認証を用いるほうが、独自認証を使うよりも、認知度が高く信頼が得られやすい場合が多い。

 しかしエコ認証は様々なものが乱立している状態で、消費者を混乱させているとの批判が上がっているのも事実。Ecolabel Indexによると、現在世界には25産業で計458個ものエコ認証が存在するという。各エコ認証は、基準も違えば、透明性も様々、何をもって「エコ」と呼ぶのか混乱しても無理はない状態だ。政府や国際機関が関与した「エコ認証の標準化」が求められているところだ。

 地球上のごみ問題は今後すぐに解決するものではなく、人々の環境意識はまだまだ強まっていくことが見込まれる。Eコマースでも店舗リテールでも、消費者の「サステナブル」や「エシカル」といった意識を汲み取ったブランドが支持される時代になっていくことになるだろう。

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この記事の著者

細谷 元(Livit)(ホソヤ ゲン)

生成AI関連のトピックを中心に執筆。最近の注目トピック/キーワード:エージェンティックAI、LangGraph、Deep Research、Anthropic、オープンソースモデル

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/05/25 14:45 https://markezine.jp/article/detail/33444

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