ヤフーが社会の変化に気づくために見ている、3つのデータ
MarkeZine編集部(以下、MZ):ヤフーでは、保有しているデータをもとに分析・提案をしていると聞いています。どのようなデータを分析対象としているのでしょうか。
坂本:主に分析しているデータは3つあります。1つ目は「Yahoo! JAPANの検索データ」、2つ目は「広告主の出稿状況」、そして3つ目は「ユーザーの反応」です。ヤフーでは、これらのデータを私の担当している不動産業界はもちろん、エンターテインメントや飲食、消費財、自動車など各ジャンルで分析し、社会の変化を常に読み解くようにしています。
1つ目のYahoo! JAPANの検索データからは、ユーザーのニーズを探ることができます。現在のコロナ禍においても、ニーズの変化を一番シンプルに判断する材料として、検索データは有用です。
2つ目の広告主の出稿状況は、今どのような広告が求められているのかを知る上で重要なデータです。各種数字を定点観察し、不動産業界全体の傾向を把握することで、広告主へ適切なアドバイスができると考えています。
最後に3つ目のユーザーの反応ですが、具体的にはクリック率やコンバージョン率を確認しています。広告に対するユーザーの反応があるか、無駄な投資になっていないか、広告効果と効率を確認しています。
不動産業界における新型コロナウイルスの影響は?
MZ:坂本さんは、不動産業界のクライアントを担当しているとのことですが、不動産業界は新型コロナウイルスの影響でどのような変化が起きていますか。
坂本:不動産関連の検索数やニーズは、ゴールデンウィーク明けから増加傾向へ転じています。
Yahoo! JAPANの検索数の推移を、不動産業界の事業領域ごとに見ると、マンションや注文住宅、リフォームなどほぼすべての事業領域において、2019年と比べて1.2〜1.4倍増加しています。仲介では、非常事態宣言時に落ち込みが見られましたが、解除後は2019年を上回る検索数になっています。
在宅時間が長くなったことにより、検討する時間が増えていると予測でき、ニーズが高まっていることがわかります。また、検索キーワードを見ると、居住目的である郊外のファミリー層物件に関する検索が増加するなど、各サブカテゴリーの中でもニーズの変化は起きています。そのあたりもきちんと把握することが重要です。
次に、広告主の出稿状況ですが、こちらは事業領域で大きく傾向が異なります。マンション、リフォームなどは、モデルルームやショールームの営業自粛にともない、広告出稿額は大きく減少。一方で、注文住宅、ハウスメーカーの領域は、来場イベントの中止にともない、その予算をデジタル広告へシフトしていった結果、広告出稿額は前年同期比で2倍に増加しています。
そして、最後のユーザーの反応ですが、非常にポジティブな数字が見て取れました。2020年4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大されましたが、そのころからハウスメーカーを中心にオンラインでの受け皿が準備されたことで、会員登録や資料請求などのオンライン上のコンバージョンが非常事態宣言前と比較して2.5倍に増加しています。
MZ:オンラインの受け皿とは、具体的には何を指すのでしょうか。
坂本:オンライン上での資料請求はもちろんですが、VRコンテンツの増加、ビデオ通話やチャットによるWeb上での相談窓口の対応強化などです。
MZ:具体的に、オンラインの受け皿を用意して上手くいった事例などはありますか?