地域情報はどうやって解析しているのか(4) IPアドレスから地域を割り出す
4番目、最後に紹介する方法は、IPアドレスから直接地域を割り出す方法です。といっても、すでに述べたようにIPアドレスは、国より細かい地域情報とは一切関係がありません。たとえば、あるIPアドレスに対して、それがたとえば渋谷からのアクセスであるとか、札幌からのアクセスである、といった完全な対応はできません。では、IPアドレスから直接地域を割り出すにはどうすればいいでしょうか。
その方法は、IPアドレスと、そのIPアドレスを割り振られたコンピュータがどこにあるのか、ということを丹念に調べ、その一覧表を作成する、という手法です。なんと地道な、と思われるかもしれません。しかし、なるべく正確に調べるためには、こうした方法しかないのです。
そして、そうしたIPアドレスと地域情報を結びつけたデータは、いくつもの会社が販売しています。こうした情報は、調べるのが大変なので、情報自身に十分な価値があり、それを販売するという商売が成り立つからです。
1つ1つ調べるにしても、どうやれば調べられるのか、と思うかもしれません。しかし調べる方法は勿論あります。たとえば、すでに紹介したドメインの登録組織情報を使う方法もその1つです。たとえば1ヵ所にしかキャンパスがない大学や、本社しかない会社のドメイン名を持つリモートホスト名なら、すぐにその場所は割り出せます。また、特定の地域だけでサービスを提供するケーブルテレビのインターネット接続サービスなども、地域を特定しやすいIPアドレスの典型でしょう。
複数の拠点を持つ組織のドメインでも、リモートホスト名を見ると、それぞれの拠点の名前が含まれている場合もあります。たとえば、東京大学の駒場キャンパスのリモートホスト名の中には「komaba.ecc.u-tokyo.ac.jp」と書かれているものがあり、これが駒場からのアクセスであることがわかるようになっています。
また、大手のISPなどになると、ホスト名の中に、地域の情報が入っている場合があります。NTTが提供するOCNからのアクセスのホスト名を見ると「p5011-ipbfp2405osakakita.osaka.ocn.ne.jp」や「p8072-ipbf615marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp」など、「大阪北」とか「丸の内」といったように、そのリモートホスト名の割り当てが行われている地域の情報が含まれている場合もあります。
また、第2回(前編・後編)でも紹介した「hostip.info」というプロジェクトでは、ボランティアベースで情報を収集しています。hostip.infoのサイトに行くと、あなた自身がアクセスしてきたIPアドレスから、そのアドレスのアクセス元として登録されている場所が表示されます。そして、それがもし間違っていたり、もしくは登録されていなかったりした場合には、自分で修正をすることができるのです。そうして世界中の人から登録、修正されたデータを、無償で配布しています。
ただし、こうした方法も、欠点があります。その1つは、IPアドレスは別の場所で再利用される可能性がある点です。つまり、ある時ある組織で使われていたIPアドレスが、その後使われなくなり、今度は別の場所にある別の組織で使われるようになることがあるのです。IPアドレスは有限ですから、一度使ったら使い捨て、というわけにはいかないのです。
そのため、IPアドレスと地域情報のデータベースは、定期的にアップデートする必要があります。こうした情報を販売している企業は、年間ライセンスのように、定期的なアップデート込みの値段をつけているケースも多くなっています。
もう1つの問題は、ADSLなど、一般家庭が接続しているプロバイダでは、IPアドレスを使い回している場合があります。このようなケースも第2回(前編・後編)で解説していますが、全国規模のプロバイダの場合、IPアドレスも全国で使い回しているケースがあるので、そうした場合は地域の特定は無理になってしまいます。