足立さんがマクドナルド時代やっていた、アプリのアクティブ化
中川:ではここから、マクドナルド時代の話もお聞きしますが、定期的な来店を促すために提供していたサービスはありますか。
足立:代表的なのはアプリですね。僕がいた頃から、ひっそりと(笑)。でも戦略的にダウンロードとユーザー数を増やす努力をしていたので、今では数千万というアクティブユーザーがいるアプリになりました。
これだけの数が浸透すると良いことが大きく2つありました。1つは告知に対するコストが限りなく少なくなること。新商品やキャンペーンなどの告知には毎度広告費がかかりますが、アプリであればそのコストを削減しながら、お客様に直接メッセージをお届けできるわけです。なので、僕がいた頃に、電子メールとLINEの活用もやめました。
そして、もう1つがアプリのメディア化です。なにしろ数千万のというニュースアプリにも劣らないレベルのMAUがあったので、そのアプリ上での告知を条件(バーター)に様々な企業とのコラボを積極的に行うことができたんです。
中川:それだけの方にアプリを積極的に使ってもらうために、どのようなことをしていたんでしょうか。
足立:3つあって、1つ目はクーポンです。早い段階から、アプリを開けるとクーポンに関する情報がすぐ出てくるようにしていました。また、当時力を入れていたのはハッピーセットに関するクーポンです。これを注文するお客様は継続性の高いことがわかっていたので、非常にお得なクーポンを提供していました。
2つ目は、アプリ上の情報量を増やすということです。たとえば、ハッピーセットの使用動画をアプリに置くことで、(それまでは購入しないとわからなかった)おもちゃの遊び方や種類がわかるようにしました。その他にも、商品やキャンペーンなど、マクドナルドのことがすべてわかるくらい圧倒的に情報を詰め込んだんです。
そして、3つ目はアプリからしかできない機能を作ること。たとえば、マクドナルド総選挙というキャンペーンでは、商品のQRコードをアプリで読み取ることで投票できるようにし、アプリがないと参加できない仕様にしました。
これらの3つでDL数とMAUを増加させていたので、アプリの数を増やすために販促費をかけたことはないと思います。
コミュニケーションは全方位が前提
中川:なるほど。アプリの話をクライアントとしていると「年齢の高い人はアプリが使えないのでは?」と議論になることがあります。そのように、アプリによって利用者を狭めてしまうかもしれないという危惧はありませんでしたか。
足立:その危惧はありませんでした。なぜなら、決してアプリのみにコミュニケーションを集約していたわけではないからです。日本の総人口のうち、28.4%は65歳以上の高齢者です(総務省統計局より、2019年時点)。そのため、この約3人に1人の割合を占める方たちにもアプローチするために活用していたのが折り込みチラシです。当時、様々なメディアを検討しましたが、チラシと同様の効果があるメディアは他にはありませんでした。
マクドナルドに来たことがないという方はほとんどいません。そのため、すべての世代に広くリーチしていく必要があり、アプリだけでなくマス広告やSNSなど、ありとあらゆる手段で全方位的にコミュニケーションを取っていました。