カーネルおじさんがあちこちに出現!ARエフェクトをリリース
――はじめに、プロジェクトに関わった皆さんの自己紹介と、担当の業務を教えてください。
平野:日本ケンタッキー・フライド・チキン(以下、日本KFC)の平野です。Instagram(@kfc_japan)やTwitterなどのSNS運用を中心に、デジタルマーケティングを担当しています。
吉原:博報堂の吉原です。日本KFC様の担当として、デジタル広告のプラニングやSNS運用の支援をしています。
灰田:トーチライトの灰田です。当社は博報堂DYグループの会社で、企業のソーシャルメディアマーケティング支援を専門としています。私はソーシャルメディアプラットフォームの発表するテクノロジーの研究・活用の推進を担当しており、今回はカーネルカメラのARカメラエフェクトの制作ディレクションを担当しました。
服部:Facebook Japanの服部です。私は、エージェンシーのクリエイティブとの協業を推進する担当で、Facebookが提供するARの制作プラットフォーム「Spark AR」をご活用いただくにあたって博報堂さん、トーチライトさんをサポートさせていただきました。
――日本KFCさんは今年2月、InstagramのARエフェクトを活用した「カーネルカメラ」をリリースされました。まずはどのようなプロダクトなのか、教えてください。
平野:カーネルカメラは、Instagram上で楽しめるARエフェクトです。今回は、インカメラとアウトカメラ、2つのエフェクトを制作しました。インカメラは「カーネルおじさんになれる!」エフェクトです。カーネルを象徴する「メガネ」「口ひげ」「あごひげ」が、カメラに写った顔に合わせて表示されます。最大5名まで対応していますので、みんなで遊ぶことができます。
そしてアウトカメラは「カーネルおじさんが現れる!」エフェクトです。いろいろな場所にカーネルを登場させたり、一緒に記念撮影をしたりと、カーネルとリアルな世界の合成が楽しめます。
Instagramは「ありがとう」を伝え、もっと深くつながる場
――とてもおもしろいエフェクトですよね。では今回、なぜカーネルカメラを企画されたのでしょうか。まずは日本KFCさん全体のマーケティング戦略から教えてください。
平野:今年、創業50周年を迎える日本KFCの企業理念は、「おいしさ、しあわせ創造」です。クリスマスやお誕生日のお祝いなど、ハレの日のイメージが強いケンタッキーですが、より身近なブランドに感じていただけるようなマーケティングコミュニケーションに注力してきました。その上でSNSは、おなじみの味を皆さまに想起していただく、タッチポイントのひとつとして活用しています。
――平野さんは、複数のSNSを運用されているとうかがいましたが、どのように使い分けているのでしょうか。
平野:それぞれのSNSは特性に合わせて使い分けているのですが、Instagramは、お客様へ「ありがとう」を伝え、企業とつながっていることを表現する場だと考えています。実はInstagramは、いいね!やコメントなどのリアクションをしても、フィードを埋め尽くしてしまうことがないため、双方向のやりとりをしていくのにぴったりなのです。
たとえば、#ケンタフォトを付けて投稿された写真を紹介したり、ストーリーズの投稿に対して拍手やありがとうのスタンプをつけて「お返し」したりしています。すると「ケンタッキーが反応してくれた」と喜んでくださったお客様が、またストーリーズに載せてくれる……という、連鎖が起きるのです。1人ひとりのお客様と深く関わり、熱量を上げられるところが、Instagramの良さだと感じます。
吉原:ほかにも、世界のKFCやチキンのアレンジをご紹介していますよね。お客様とのコミュニケーションを丁寧にされていて、Instagramの特性を上手に活用されていると思っています。日本KFC様のInstagramアカウントは、お客様とみんなで作る、メディアやギャラリーのような印象です。
平野:KFCには創業者であるカーネル・サンダースの「おいしい食べもので、すべての人をしあわせにしたい」という、ぶれないモットーがあり、マーケティングでは、このカーネルの価値観を伝えていくことも大切にしています。そして、ブランド名を言わなくても「KFCだ」と想起してもらえるバーレルやカーネル立像といったアイテムをいくつも持っているので、こうした資産もコミュニケーションに取り入れています。
ARエフェクトでブランドとの距離を“一気に”縮める
――続いて、カーネルカメラを企画したきっかけを教えてください。
吉原:毎月Instagramアカウント運用についてのご報告をさせていただいているのですが、その際に1つのトピックスとしてARエフェクトをご紹介しました。そうしたら、平野さんももともとARエフェクトに関心をお持ちだったようで「コスメや映画のプロモーションで見かけますが、飲食での事例は少ないですよね。ぜひ日本KFCでやってみたいです」と言ってくださいました。その後、すぐに企画を進めることになりました。
平野:他社様や海外ブランドのSNSやプロモーションはよくチェックしていて、ARカメラで遊んだ経験もありました。日本KFCが50周年記念を迎える年に、新しくておもしろいことに挑戦したいと考えていましたので、とても画期的なご提案でした。
またカーネルはメガネやヒゲなど、アイコニックなポイントをたくさん持っています。ARエフェクトはそうした特徴を活かすのにぴったりだと、吉原さんと盛り上がりましたよね。
――続いて、Facebookの服部さんにうかがいます。FacebookはVRヘッドセットのOculus(オキュラス)をはじめとして、新しいテクノロジーへの投資が盛んです。AR領域への注力には、どのような背景があるのでしょうか。
服部:Instagramのミッションは「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」こと。それを実現するためのひとつの方法として、Facebook社として注力している「物理的な距離も乗り越えていこう」という考え方や技術を活用しています。この考えのアウトプットのひとつが、InstagramのARエフェクトなのです。
――なるほど。確かに、ARエフェクトでアイコンやキャラクターと一緒に撮影すると、ぐっと身近に感じますね。
服部:はい。日本における Instagramの月間アクティブアカウントは3,300万を超え、多くの人が昼夜問わず利用してくださり、日常に欠かせないプラットフォームへと成長しました。そしてInstagramは、写真や動画などビジュアルによる直感的なコミュニケーションに強いことから、「少し興味がある」から、「好きかもしれない」「見ていたらファンになった」と、その世界に徐々に没入できる特徴があります。例えるなら、一度ハマったらなかなか抜け出せない「沼」と言えるかもしれません。
こうしたInstagramの特徴と、ARエフェクトを用いたコミュニケーションを掛け合わせることで、ブランドと利用者の距離を一気に縮めることができるでしょう。
開発のハードルを下げる「Spark AR」とは?
――今回ARの制作を担当されたトーチライトの灰田さんは、クリエイターとして、ARにはどのような印象を持っていましたか。
灰田:以前、イベントのお楽しみコンテンツとしてARカメラを制作したとき、利用者の方々にARを思っていた以上に抵抗なく気軽に楽しんでいただいたという実感を持っていました。一方企業にとってはモバイル向けARをゼロベースで制作するのは難しく、気軽に導入できるものではなかったのも事実です。しかしFacebookさんの「Spark AR」が登場して以降、効率よく制作を進めることができ、AR制作のハードルが一気に下がりました。
――Spark ARについて詳しく教えてください。
服部:2019年より、InstagramでどなたでもSpark AR を使ってInstagramストーリーズのARカメラエフェクトを制作いただけるようになりました。Spark ARは、ARを開発・活用いただくためにFacebookが用意したプラットフォームで、無料の開発エンジン、最新の情報をお伝えするWebサイト、エンジニアやクリエイターをつなぐコミュニティを兼ねています。ARで何ができるのか、どうやって開発を進めるのかといった情報も、発信しています。
灰田:Spark ARを使うことでiOSおよびAndroidのクロスプラットフォームで動作するモバイル向けARを簡単に制作できます。WindowsとMacのどちらからでも開発できるなど、制作環境も充実しています。
また、Spark ARが登場する以前には、ARを使っていただくには、まずARを表示させるアプリやツールの訴求からスタートしなければならず、マーケティングのハードルも高いものでした。しかしすでにユーザー基盤を持つInstagram上で展開すれば、ストーリーズを通じてARをすぐに試してもらえるポテンシャルがあると注目していました。今回はみんなが知っているKFCブランドによる先進的な取り組みですから、とてもやりがいがありましたね。
吉原:灰田さんはFacebook公式のARハッカソンにも参加され、ARに関する様々な知見をお持ちでした。そのため、こちらが漠然と持っている企画イメージをすぐにARエフェクトとして落とし込んでくださり、とてもスムーズに制作を進めることができました。
インカメラ/アウトカメラの使い分けで、表現の幅を広げる
――今回リリースされたカーネルカメラは、特にアイデアを形にする過程で、試行錯誤が続いたと聞いています。どのようなプロセスを経て、企画が作られたのでしょうか。
平野:昨年の夏にご提案をいただき、制作スケジュールなども考え、今年の2月以降を目標にリリースを考えていました。はじめはバレンタインデーやホワイトデーのイベントに合わせ、SNS上で反響が起きるような、シュールでおもしろみのある企画を検討していたのです。
一方で、カーネルのメガネやヒゲといったアイコンも取り入れたいし、卒業式や入学式などのイベントでも使ってほしい思いもあって、「みんなでカーネルになれるというのはどうだろう」とアイデアも浮かびました。
吉原:また、このカーネルカメラをあらゆる人に使っていただきたいという思いもありました。Instagramのユーザーの中には人物写真を投稿するユーザーも風景写真を投稿するユーザーもいます。そんなInstagramの特性と、平野さんと温めていた企画を踏まえて、インカメラ/アウトカメラを使い分ける方向で話がまとまりました。
――灰田さんは、制作にあたって、どういった点がポイントだと思いましたか。
灰田:平野さんたちのチームは、実現したい世界観をしっかりとお持ちでした。「ものボケ」「記念撮影」「こんなところにカーネルがいた」のような利用シーンや、「いろんな町をカーネルが旅する」のような具体性のあるアイデアを話してくれたのです。ですから私たち制作サイドの役割は、テクノロジーの可能性を検証し、一方でSpark ARレビューポリシーを踏まえながら、アイデアを最大限に実現することだと考えておりました。
――ありがとうございます。記事の後編では、企画を実現するための設計・制作プロセス、そしてカーネルカメラのプロモーションについてうかがっていきます。
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