コロナ禍でアプリダウンロード数25%増、利用時間も伸長
新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染拡大の影響を受け、在宅ワークやステイホームが推奨されるなど、生活者のライフスタイルや消費行動に変化が起きている。では、モバイル・アプリの利用にはどのような変化が起きているのだろうか。App Annie Japanが公開した「2020年上半期 モバイル市場へのコロナウイルスの影響と消費者行動の変化」によると、2020年上半期は2019年下半期と比べ、アプリのダウンロード数が25%増に、モバイル広告が70%増という結果が出ている。また2020年4月1日のモバイル利用時間平均は4.3時間。これは、向井氏によると2019年の平均3時間から大幅に伸びているという。
「モバイルの利用時間が大幅に伸びたことは、スマホをチャネルとして生活者とコミュニケーションを取りたい企業にとっては追い風とも取れます。一方で、多くの企業がこの領域に乗り出してきた結果として伸びたという観点で考えると、競争が激化しているとも捉えられます。企業は競争力をさらに上げていかないと、なかなか生活者に選んでもらえないという状況がコロナ禍でより顕著になったように思います」(向井氏)
向井氏によると、日本の生活者がスマホで課金する総額は年間1兆3,000億円にもなるという。これは主にゲーム、動画、コミック、投げ銭に対するもので、企業の広告収益やECの売り上げは含まれない。特に緊急事態宣言が発令された今年4月には、収益上位10社の合計だけでも1ヵ月で300億円を売り上げたという。もちろん、ステイホームで家の中で楽しめるコンテンツの需要が高まった影響が大きいだろう。
また在宅ワークとなり、自宅で食事をする機会が増えたことによって料理のマーケットが盛り上がるなど、好機となった業界もある。今が攻め時だと考えた企業により、たとえば食料品メーカーの広告投下量は増えているという。
「企業からすると、スマホを通して生活者との接点が増えたということになりますし、生活者からするとスマホで見るものの選択肢が増えたということになります。読まれるメディアが増えたことにより、広告の投下量が全体的に押し上がったのだと思います」(向井氏)
アプリ利用は一時的に減ったものの、EC売上は増加
生活者のモバイル利用時間が増えていることが見えてきた。では、コロナ禍における「アプリ活用」にはどのような変化があったのだろうか。
ランチェスターが提供するモバイルアプリプラットフォーム「MGRe(メグリ)」は、アプリの導入から運用、施策改善までワンストップでアプリマーケティングを支援するプラットフォームだ。既存アプリのリプレイスから新規導入まで、リテール業界での実績が多いことが特徴である。この「MGRe」利用企業における、今年3月と4月の顧客行動を比較すると、会員証ページのアクセスやMAU(月間利用者数)が減ったものの、ECへのアクセスは55%も増加したという。
「我々のクライアント企業は店舗を持つ小売店が多いです。緊急事態宣言が発令されて顧客が店舗へ行けなくなると、アプリの会員証を開く理由がなくなるため、最大54%のアクセス減となりました。ただ、購買行動が止まるわけではないので、アプリ内でのECのアクセスや売り上げは増えた企業が多かったです」(田代氏)
緊急事態宣言発令時はアプリ利用者は20%減となったが、翌5月からは回復傾向となり、6月以降はコロナ禍以前よりも増加する結果になった。ECでの売上も伸びていったという。
「アプリの中にある機能は、会員証だけではありません。以前よりいろいろな仕組みを備え施策を行ってきた企業は、コロナ禍の中でもMGReを活用して改善を繰り返し、アプリの中でできることをどんどんアップデートしていきました」(田代氏)
では、コロナ禍以前より売り上げを増やした企業はどのような施策を行ってきたのだろうか。次から事例とともに紹介していく。