有益なコンテンツで顧客の心を掴む
MGReを活用してアプリを改善し、ECでの売り上げを伸ばしていった企業の一つが、アパレルメーカーの「オンワードホールディングス」だ。
「オンワードは店舗を多数閉店というニュースがありましたが、コロナがあってもなくても、アパレル業界は店舗からECへと移行していく流れになったのではないかと思います。緊急事態宣言の発令時にはアプリの利用や売り上げも一旦落ちましたが、その後ECのアクセスが非常に増え、売り上げも伸びています」(田代氏)
オンワードが力を入れたのは、コーデ(コーディネート)を紹介するコンテンツだ。店舗スタッフやブランド社員によるコーデを発信していくことで、顧客がオンラインでも自分の好みに合うか、体型に合いそうかといった判断をする手助けとなった。
とはいえ、アパレル企業がコーデを紹介するコンテンツを提供するのはよくあることだ。その中でもオンワードが成果を上げているのは、なぜなのだろうか。
「売り上げを伸ばしている企業のポイントは、ブランディングやキャンペーンを社内できちんと考え、短期間でうまく発信できている点ではないかと思います。様々な企業のアプリのデータを見ていて、伸びるポイントでは何をやっていたのかチェックすると、そうしたオリジナルの企画をプッシュ通知で知らせています。特にオンワードは生え抜きの方が多いので、組織全体で一丸となって、様々なアイデアを取り入れながらデジタル活用をしています。最初はコーデの投稿も少なかったのですが、組織的に評価やKPIなども含め、これが自分たちの仕事であるという意識をうまく醸成していきました」(田代氏)
アプリはロイヤリティを高めるコミュニケーションの場へ
MGReを活用したもう一つの事例として、「東急ハンズ」がある。こちらも「ヒントマガジン」という読み物コンテンツでアクセスを伸ばしていった。
「単に買い物をするとポイントが貯まったり、セールのお知らせが届いたりというだけのアプリでは、販促ツールにしかなりません。顧客にとって有益なコンテンツを用意し、アプリでコミュニケーションを取り、データを見ながらコンテンツをより良くしていくとコロナ禍でもアクセスが増えていきます」(田代氏)
また、東急ハンズではアプリを通してライブコマースにも取り組んでいる。ライブコマースでは顧客が見逃してしまわないよう告知をすることが大事になる。そのために、決まった曜日・時間に定期的に開催することで常連客がつくようにするという工夫をしている企業もある。
コスメブランド「THREE」の事例でもECでの売り上げ、アクセス数ともにコロナ禍以前以上に伸びている。
「THREEは非常にエンゲージメントの高い顧客が多いので、そうした会員限定でオンラインのワークショップをやるなど、非常に顧客を大事にしています。非常に細かくセグメントを作ってコミュニケーションを取っているので、数字がボンボン跳ね上がるというよりは、エンゲージメントがどんどん上がっていく。そうするとアプリの滞在も長くなり、コンテンツの閲覧数もどんどん増えていきます」(田代氏)
ここまで紹介した3つの事例のポイントをまとめると、売上やアクセスが伸びている企業は、(1)顧客に有益なコンテンツを持ち、(2)それをキャンペーンやプッシュ通知をうまく組み合わせて大きく集客し、(3)アクセスしてきた顧客が離脱しないような仕掛けをしているところだと言える。