コンテンツの空振りを防ぐ3つの共通認識
オフラインとオンライン(デジタル)の大きな違いのひとつに、オンラインでは買い手の顔や態度が非常に見づらい点があります。展示会やセミナーなどのオフラインイベントであれば、買い手の態度からどれくらい“熱いのか”を五感で感じ取ることができ、勘所の良いマーケティング担当者や、営業担当者であれば、その商談が決まるかどうかを察することもできます。
しかし残念なことに、オンラインの世界では、そのような人間の勘に頼ることがまずできません。むしろ、オンラインで勘に頼ってコンテンツを作ると空振りを連発する……ということが必ず発生します。展示会でブースを作る際には必ず来場数やブース訪問者の動きや導線を確認するのに、オンラインになった途端「このページは見づらいから改修しよう(そうすれば申し込みは増えるはずだ!)」という具合に、勘でコンテンツを継ぎ足していくことが、とにかくの多いです。買い手が視覚的に見えにくいオンラインコンテンツで空振りを防ぐためには、利害関係者との間で以下の3つの共通認識を持つことが鍵になります。
(1)(自社の)現状とありたい姿
(2)ペルソナ
(3)カスタマージャーニー
(1)の現状とありたい姿を理解する大切さは言わずと知れたことですので、ここでは割愛させていただきます。(2)ペルソナとは、半架空の理想的な顧客像で、日常の業務において自身やチーム、部門、自社の課題を抱え、売り手のソリューションによって最終的に課題解決を行う人物像です。そのペルソナが徐々に課題解決のために知識や解決策を探っていく“成長物語”が、(3)のカスタマージャーニーと言われるものです。このペルソナとカスタマージャーニーを明確に理解することによって、Relevance=オンラインのコンテンツを活用する場所(チャネル)、Timing=タイミング、そしてContext=コンテキスト(前後の文脈)を絞り込み、価値あるコンテンツを届けることができるようになります。

カスタマージャーニー不要論の落とし穴
BtoBのマーケティング関係者からペルソナやカスタマージャーニー不要論をたまに耳にしますが、大抵の場合、その主張をされる方は「買い手をすでに理解しており、直感的に購買につなげることができる優秀なビジネスマン」です。一方で、企業の中には、バックオフィス、マーケティング、開発、PR室など、買い手と直接接することがない部門に属する人が大勢います。買い手の顔が見えない状況で、買い手との接点がない部門含めた売り手が一貫した顧客体験を提供するには、ほぼ確実にペルソナやカスタマージャーニーが必要になります。また、売り手の企業規模や製品数が多ければ多いほど、必要性はさらに高まります。
買い手の課題解決までの「成長物語」が明確にできれば、あとは自社の現状とあるべき姿を比較し、ギャップを埋める戦略や戦術の選定を開始できます。ここで注意したいのは、デジタルマーケティングはオフラインと比較して変化が早い上に、打ち手の数がとにかく多いこと。SEO、コンテンツ、LPO、広告、MA、EFO、データマネジメント、ツール連携、外部メディア連携、記事広告……と、数え始めるとキリがなく、ベンダーの数も星の数ほどあります。米国では2011年で150ほどだったマーケティングテクノロジー企業数が2020年には8,000を超えるほどになりました。
このようにオンラインには、「買い手の顔を見ることができない」「打ち手は多種多様」という特徴があります。そのため、効果的なマーケティングや営業活動を一貫して行うために、自社と買い手を理解するとともに、買い手の課題を特定し「成長物語」を描くことからすべてが始まります。