自社のブランドロイヤリティを醸成する要素を把握せよ
では、ブランドAとブランドZの比較も見てみましょう。

上記もブランドの利用状況を現在ブランドを利用している層(現利用層)、過去にブランドを利用していた層(過去利用層)、まだブランドを利用していない層(未利用層)の3つに分け、セグメントごとにプロットしたものです。
ブランドAはアパレルの製造小売業、ブランドZは雑貨の製造小売業と、いわゆる業種でのカテゴリーは異なります。しかし、いずれもブランドロイヤリティが高いと評価されているブランドです。
ブランドAは現利用層のブランドロイヤリティがその高さをけん引しています(ロイヤリティが高くボリュームが大きい)。一方、ブランドZはブランドAに比べて現利用層のボリュームこそ小さいですが、過去利用層のブランドロイヤリティが相対的に高くなっています。それが市場におけるブランドロイヤリティの高さを担保している要因と言えます。
各セグメントの横軸(左右)のプロットは相似形を描いているので、業種カテゴリーは異なるものの、ブランドロイヤリティを構成する要素としては非常に近しいものを持っていると考えられます。
同じ業種カテゴリーであるブランドA、ブランドBの比較と、異なる業種カテゴリーであるブランドA、ブランドZの比較から言えることとはなんだと思いますか?
同じアパレルの製造小売業であるブランドAとブランドBは、いずれもお客様へ提供する商財は洋服ですが、ブランドが提供している価値そのもので比べると、明確な違いがある。一方、ブランドBとは異なりブランドAとブランドZは、お客様へ提供する商財は雑貨ですが、ブランドが提供している価値そのものには非常に近しいものがある。ということが言えるでしょう。
洋服を扱っているからと言って、洋服を扱っている他社のみをベンチマークし、自社と比較して一喜一憂する、あるいは競合との差別化を考えることが不合理であることは、もう明らかですね。
我々のブランドロイヤリティ調査では、ロイヤリティを醸成する要素を構造化して捉えることができます。したがってここに取り上げたブランドも、なぜこのような状態なのか、を説明することが可能です。
そして、自らのブランドがどのようなブランドロイヤリティで醸成されているかを把握し、既に保有している資産を捉えておくことは、カテゴライズの罠を逃れ、独自の存在を目指していく上で必要な工程であると我々は考えます。