デジタル活用の成功パターンを導く
今回紹介する書籍は、『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない」施策を繰り返すのか?』。著者は、マーケティングソリューションの開発や提供、企業のDXコンサルティング事業を展開するWACAL(ワカル)の垣内勇威氏です。
垣内氏は、Web改善コンサルティングの経験を積んだ後にWACULに入社し、WebマーケティングのPDCAをAIで支援するSaaSツール「AIアナリスト」の開発などを担当。現在は取締役CIO兼WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長として、ノウハウの構築や新たなプロダクトの開発に携わっています。
本書は、垣内氏がこれまでに培ったノウハウから「企業がデジタルをマーケティングに活用するなら、必ず知っておかなければならない」と考えるデジタルマーケティングの定石を解説したものです。
垣内氏の言う定石とは「従来の顧客接点をデジタルに置換することで、大幅なコスト削減を実現する施策パターン」。過去のコンサルティング経験やユーザー行動観察データから導き出してきたパターンを元に、Webサイトに限らず、アプリ、ネット広告、SNS、メールなど、インターネットを用いて顧客と接触可能な媒体すべてを対象に語っています。
さらに本書で特徴的なのは、メインとなる「定石」の解説だけでなく、その前提となる「デジタルの特性」を解説するページが多いことです。それはなぜなのでしょうか。
なぜマーケターは「成果の出ない」施策を繰り返すのか?
垣内氏は、多くの企業が「定石」という成功パターンに至ることなく、「成果の出ない施策が繰り返されてしまう」理由について、次のように考えを示しています。
一言で言えば、企業担当者が「デジタル特性を理解していないから」です。デジタルは万能ではありません。特性を正確に理解するには、「得意なこと(強み)」と「苦手なこと(限界)」を知る必要があります。(p.20)
デジタル媒体は基本的にユーザーによるセルフサービスであるため、対面における細やかなおもてなしはできず、ユーザーが目の前にいないことから心理状態を把握することも難しい。一方で、セルフサービスだけらこそ接客にかかる人件費は抑えられ、時間の限られるテレビCMよりは商品の特徴やストーリーが伝えやすく、コストがかからない。
垣内氏はこのようなデジタルの限界と強みを知ることで、繰り返されてきた失敗の要因と取り組むべき施策を理解できるようになり、本来デジタルを使う以前に人が考えるべき戦略に取り組めると主張しているのです。
デジタルの限界と本来活かすべき強みは、本書のPart1「デジタルの特性を理解する」で詳しく解説されています。続くPart2「デジタルの定石を理解する」では、デジタルの使い方が顧客主導で購入に至るまでのフェーズに沿って説明され、さらにPart3「定石を使って実践する」では、様々なビジネスモデルに対応する実践的な活用パターンとして18の型を知ることができます。
より本格的なデジタル活用に挑戦しようとしている方や、自社のデジタル活用に無駄を感じる方、かけた時間に見合うインパクトを感じられていない方には、特にお薦めの書籍です。一度読んでみてはいかがでしょうか。