「みずたまラボ」でファン同士の活動を活性化
徳力:アサヒ飲料さんは複数の飲料ブランドを展開されていますが、なぜ「カルピス」からファン施策を始められたのでしょうか?
菅根:飲料という消費財でも、ファンがいそうなものとそうでないものがあると思うのですが、「カルピス」ならばロングセラー商品でもありますし、コアファンがいるのではないか? と思い、チャレンジしてみようかと思ったのがきっかけです。
100周年の「カルピス」の誕生日にはファンのみなさまと一緒に祝いたいという想いで、100周年の1年前となる2018年7月7日から、ファンミーティングをスタートしました。
2018年7月から、毎回20〜30人程度のファンの方をお呼びして、4回のファンミーティングを行ってきました。そして、5回目には2019年7月7日に、73名(47組)の方に社内に集まっていただき、100周年をファンミーティングで迎えることができました。CMの発表会などにもファンの皆さんをお呼びしたり、会社の食堂にもお呼びしたりと、手作り感満載でしたが、楽しんでいただけることができたと思います。

徳力:ファンミーティングで70名は多いですね。
菅根:ふだんは20名から30名程度で行っています。今はコロナの影響で既に今年2回ほど行っていたはずのファンミーティングは延期になっていて、これからオンラインミーティングで再開しようと予定中です(8月に実施済み)。
ベースになるファンのサイトとして「みずたまラボ」を立ち上げてあり、こちらに登録いただくと、新製品情報をいち早く取得したり、ファンミーティングに参加できたりするという仕組みです。

徳力:ファンの方に実際会ってみてどうでしたか。
菅根:ミーティングでは数名ごとのテーブルに社員が一人ずつつくようにしているのですが、初対面同士の方でもかなり盛り上がっています。SNSでのつぶやきを事前にチェックしていると、どのつぶやきをされた方かわかるので、それが話題のきっかけになったりするようですね。社内でもよい影響があると感じています。ミーティングで会って意気投合し、一緒に「カルピス」ゆかりの地をめぐる旅をされた方もいらっしゃいます。
社内の担当者を一定期間で変え、ファン施策を「体験」させる
徳力:この仕事をしていると、多くの会社の方が「うちの製品にファンはいるのかな……?」といった懐疑的な気持ちを持っていて、実際のファンに会うとすごく驚くということはあるようですね。社員の方への影響もあると思いますか?
菅根:はい。「みずたまラボ」のファンミーティングには、宣伝部の中のクリエイティブグループに限らず、デザイングループやメディアグループ、もちろんマーケティング部の社員にも参加してもらっています。私自身も思ったのですが、ファンベース施策は体験してみないことにはわからないですよね。クリエイティブグループの人間が熱心に呼びかけても、おもしろそうだと思う社員もいれば、目の前の自分の成果と直結しないので、「なんでそれが必要なんですか?」と思う社員もいます。
そこで、いろんな社員が“ファンと向き合う仕事”をできるよう、社内で「みずたまラボ」の担当者を一定期間で変えるようにしています。実際にやってみると、意外にその人なりの意義を感じてくれることも少なくないようです。
徳力:2019年は、「カルピス」年賀状をファンの方に送るという企画もあったそうですね。
菅根:元々これは、100周年の社内施策の一つである社員用のオリジナルの「カルピス」年賀状から生まれた企画でした。いろいろデザインを作っているうちに「もしかしたらこれ、ファンの方にもよろこんでいただけるのかも」とSNSでプレゼントしてみることにしました。

徳力:この年賀状企画は、応募してくれた方に抽選で「カルピス」オリジナル年賀状をプレゼントするということでしたが、実際には応募者全員に、社員から年賀状を出したのですよね。しかもすべて手書きのご挨拶を書かれたそうで。大変ではなかったですか?
菅根:はじめてみたら「こんなにあったか」とちょっと大変ではありましたが、皆で分担して、ちゃんと書いています(笑)。
徳力:飲料メーカーだからこそなのでしょうか。そのおもてなしの精神がすごいな! と思いました。ファンに向き合ったことがないと、社内でもだんだんお客様対応係のクレームの声ばかりが印象に残ってしまうと聞きます。こういったコミュニケーションが、社員の方へのいい影響にもなっているのでしょうね。