スモールステップで成果を重ね、コンテンツマーケティングを拡大
では、BtoCの三井住友カードはどうだろうか。
福田氏は、コンテンツマーケティングを始めた当初、社内が前向きではなく、予算の獲得から難しかったと振り返る。とくにオンラインで申込みが完了するサービスの場合、「予算をいくら投資し、いくら獲得できたのか?」が大前提だ。

そこで福田氏は、成果が可視化しやすいSEOコンテンツからスタート。
検索ボリュームから目標トラフィック数を算出し、そこからコンバージョンレートをかけ、必要予算を獲得。検索件数に対して流入が少なく、獲得が見込めるキーワードを狙った。そうして、なかなか成果がでない冬の時代を乗り越え、初期投資200万円、運用コストも最小限に抑えて、単月200件の獲得を達成する。この成功事例をきっかけに、福田氏はコンテンツマーケティングを拡大していった。
次に手がけたのが、ネイティブアドだ。ポイントは、成果が出ている獲得向けSEOコンテンツをベースに、認知度や貢献、誘導性、コンバージョンキーなどを分析し、目的ごとにネイティブアドを配信したこと。CPCは20円台、コンバージョンも合格点で、コストパフォーマンスがよく、今も継続的に行っている施策だという。
このように少しずつ成果を積み重ね、ブランディング向けコンテンツのキャッシュレス読み物も作成した。「キャッシュレス=三井住友カード」の認知を取る目的で、キャッシュレスの検索ボリュームが盛り上がったタイミングに、30万PVと検索結果1位を獲得している。
スモールステップで確実に結果を出し、コンテンツマーケティングの領域や社内理解も広げている福田氏。今では、アニメーションによるコンテンツ配信や、会員向けコンテンツの作成などにも取り組み、チャレンジがしやすい土壌も形成されているという。
コンテンツマーケティングが成功する7つのポイント
終わりに、ウェビナー参加者からの質問を受け、コンテンツマーケティングの制作体制が語られた。エージェンシーやベンダーと一緒に制作するとき、どのようにリソース配分をするべきだろうか。
實川氏は、SEOとSNSブランディングコンテンツを明確に分け、SEOコンテンツは外注している。一方、インタビューは編集プロダクションに依頼し、自社の主張をしっかり伝えたい専門性が必要なコンテンツは、社内で書き手を募るそうだ。そのコンテンツがどういった役割を果たすべきかを踏まえて、ハイブリッドに運用している。
「ブランディングコンテンツは、制作に時間がかかります。でも、クオリティに関わる部分は妥協すべではありません。コンテンツのレギュレーションを守りつつ、書き手の味を尊重しています」(實川氏)
対して福田氏は、「自分がやると覚悟を持ちましょう」と、ストイックな姿勢を貫く。「社内で覚悟を持って発信できる担当者がいない限り、コンテンツマーケティングはするべきではないし、良い提案を持つベンダーがいても、うまく回らない」と断言。責任を持つことで、スピード感も生まれ、成果に繋がるのだ。
「少しでもより良いコンテンツが社会に溢れてほしい」と、自社のコンテンツマーケティングのノウハウを、余すところなくオープンに発信してくれた實川氏と福田氏。改めて、再現性の面からコンテンツマーケティングが成功する7つのポイントをまとめた。ぜひ、自社の施策に生かしていただきたい。
- 自社の商品特性やマーケティングから、「コンテンツマーケティングのどこから始めるか?」を明確にする
- 1つのコンテンツには、1つの目的を割り振る
- 予算設計がシンプルで成果を狙いやすい、SEOコンテンツが優先
- 成果が出ているSEOコンテンツを再構成し、ネイティブアドに活用する
- 作成したコンテンツは、PRや広告、営業資料など、様々な用途でも利用する
- コンテンツは、読み手のニーズと自社のメリット両方を盛り込む
- コンテンツマーケティングが成果を出すまで、時間がかかる。担当者も組織も、やりきる覚悟を決めよう
続いて、次のレポートでは、聴講者からの質問に対する【回答編】を紹介する。