トレンドの変遷から見える「女子の理想」の変化
長田:この大きな変化の要因として、“理想の姿”がどんどん自分にカスタマイズされていったことがあげられます。
崔:芸能人完コピ時代から、インフルエンサーを参考にする時代になって……今は、自分でカスタマイズする時代、みたいな感じでしょうか。

長田:そうですね。2015年は、当時ドラマでの出演の影響から、石原さとみさんを目指す女子が急増していたり、2016年頃は、雑誌『POPTEEN』で活躍していた“みちょぱ(池田美優さん)”“にこるん(藤田ニコルさん)”たちが若者のアイコン的存在となっていたりしました。
2017年頃からSNSでの情報収集も活発になり、情報源が増えたことで「理想の姿」も多様化し、最近では若者をインタビューしていると、「自分に合う」といった言葉がよく出てくるように。マスメディアが発信するトレンドや、有名人など、一辺倒な指標から脱していき、「自分」を起点にファッションを選ぶようになったと言えますね。

崔:実は、SNOWでも、同様の変化が起きているんです。リリースして間もない2016年は、とにかく目を大きくするのが大鉄則。目を盛る(大きく見せる)のがメインでした。当時は「くま」と「ねずみ」の動物系スタンプが一番人気だった。目をパッと大きくでき、気になる顔のパーツもキャラクターで隠せるので、誰でも簡単に使いやすいスタンプだったんだと思います。
誰でも同じようにかわいくなれるため人気だった動物のスタンプですが、だんだんと装飾のデザインも落ち着いていきます。

右:2016年の人気スタンプ「ねずみ」
崔:変化の節目となったのは2019年頃。この頃から、自分にあったカスタマイズの加工をするようになったんです。誰もが同じフィルターを使って大幅に補正するのではなく、各々が目のサイズや肌の色味など細かく調整。自分に合ったフィルターで「アプリを使っていない」かのように見せるのがポイントとなっていきました。
長田:まさにファッションやコスメのトレンドと同じ流れですね! ファッションやコスメでいうと、2019年頃から徐々に浸透している「パーソナルカラー」がカスタマイズ化への意識の高まりが表れていると思います。
肌質や瞳の特徴などから人々を4つのタイプに分類し、それに当てはめて自分に似合う色の系統を導き出すもので、服やコスメを選ぶ際に便利です。自分のパーソナルカラーを把握している若者は非常に増えました。
【2015~2020年 若者トレンドのポイント】
・参考にするアイコン的存在がマスからSNSに移行し、憧れの対象も細分化・多様化・現在は「自分」を起点にスタイルをカスタマイズするように変化
・それぞれが自分に合った「かわいい」を見つけている