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高速型に変われるか。人間の幸福を目指せるか。“世のデジタル化”がマーケティングに突き付けた問い

 コロナ禍で暮らしのデジタル化が一足飛びに進んだ。メーカーをはじめ様々な業種のビジネスモデルにも地殻変動が起きる中、マーケティングは変われているのだろうか。今年6月に事業提携したアイレップ「TEAM JAZZ」の北爪宏彰氏とThe Breakthrough Company GOの三浦崇宏氏にこう問いかけるとともに、どう変えていくべきかを議論してもらった。

メーカーの「大移動」と低速型マーケティングの限界

――前回スタートアップのマーケティング・PRについてお話いただいたとき、大企業のビジネス環境も大きく変わっていることを伺いました。いま現状をどのように捉え、マーケティング上の問題が起きている箇所はどこにあると考えていますか。

(左)アイレップ取締役/TEAM JAZZ代表 北爪宏彰氏(右)The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/Creative Director 三浦崇宏氏
(左)アイレップ取締役/TEAM JAZZ代表 北爪宏彰氏
(右)The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/Creative Director 三浦崇宏氏

北爪:最近はマーケティング戦略を考えるとき、【顧客IDを特定しているかどうか】【自社チャネルをもっているかどうか】というマトリクスを使っています。このポジショニングによって、マーケティング戦略が大きく変わるからです。

北爪:従来、食品、医薬品、化粧品、家電などを扱うメーカーは、流通・小売の店頭で商品を届け、顧客IDをほとんど特定していない【オープンチャネル・顧客ID非特定型(左上)】でした。しかし今、デジタル化によってビジネスモデルは大きく変わりつつありますメーカーが【自社チャネル・顧客ID特定型(右下)】へと大移動していて、コロナ禍がそれをさらに加速させているのです

北爪:食品であれば、出前館やUber Eatsのように、店頭へ行かなくても、ユーザーが直接アプリで注文するデリバリーサービスが登場し、飲料でもキリンビールが「KIRIN Home Tap(キリン ホームタップ)」というサブスクリプションサービスを始めていますよね。サプリメントやゲームも、自社チャネルやECプラットフォームを整備する企業が急増しています。重要なのは、それにともなってマーケティングのアプローチが大きく変わるということです。

――詳しく教えてください。

北爪:【オープンチャネル・顧客ID非特定型】のマーケティングは、マス広告で露出合戦を行い、商品リリース時の棚取りを競い合う。KPIはShare of Voice(SOV)でした。

 これに対して【自社チャネル・顧客ID特定型】の戦い方は、売上機会の大きいターゲット領域(商品・エリアなど)にリソースを集中投下し、LTVを最大化すること。マルチターゲット・マルチクリエイティブ・マルチモーメントで、A/Bテストを行いながら、最も効果の高いクリエイティブを模索する。月や週、あるいは一日の中でコンバージョンの集中するモーメントを見極めて広告を投下する……。

三浦:これはまさに、スタートアップ型の戦い方ですよね。僕は企業の規模よりも、意思決定のスピードに応じて、低速企業、高速企業と切り分けて考えることが多いです。低速型が一概に駄目というわけではなく、ユーザーの利便性やサービスの安全性、ブランド価値を担保するために必要になることもあります。

 しかし北爪さんの言う「大移動」をした先で低速型のマーケティングをやっていても、成果が出にくい。季節や年間の計画を変えられなかったり、ターゲットを絞らなければいけないタイミングで決断できなかったりすると、圧倒的に不利です。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/10/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/34492

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