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ソーシャル・マーケティング成功の法則

予算ゼロでもマスに届く!ソーシャル・マーケティングの「コンセプト作り」と「メッセージング3原則」

広告予算ゼロでマスに伝える「メッセージング3原則」

 コンセプトができたら、次はそれをどう伝えるかという“メッセージング”が重要になる。予算の有無に関わらず、多くの人に「伝わる」メッセージを作るためには、3つの原則がある。「シンプル&何コレ?」「WOW」「自分事化するストーリー」の3つだ。これは私がこれまでマーケターとしてのキャリアのなかで、広告調査を何百本と見た中で浮かび上がってきた、メッセージングの大事な原則だ。

1.シンプル&何コレ?

 情報の流通量が年々増大する中、メッセージは究極にシンプルに削ぎ落とし、かつ「これは何だろう?」と興味喚起できるものでなければ、顧客の目にも止まらない。つまりスルーされてしまう。にも拘わらず、商品を出したりサービスを提供したり側は、15秒の短いテレビCMや動画広告、バナー広告の中に、商品やサービスの素晴らしさを詰め込みたくなってしまう。

 おにぎりアクションを主催する「TABLE FOR TWO」というNPOも、その訴求ポイントはいくつもあり、たとえば

・日本で生まれた、食にまつわるNPOである
・先進国の肥満と開発途上国の貧困の両方を同時に解決しようとしている
・先進国でヘルシーなメニューを1食食べると、アフリカに給食が1食届く

 というオリジナリティを持っている。

 しかし、たとえば15秒のCMの中でこれらをすべて伝えても、膨大な情報の中で注目を集めることは難しいかもしれない。「シンプル&何コレ?」を追求した時、“おにぎり”は良いアイコンになるのではと考えた。そこで、“おにぎり”をアイコンにして、かつ“おにぎりで世界を変える”という違和感満載のメッセージで、「シンプル&何コレ?」を実現した。

「おにぎりアクション」のコンセプト
「おにぎりアクション」のコンセプト

2.WOW

 WOWとは、「シンプル&何コレ」のメッセージに興味喚起した先にある「感動」を指している。たとえば、「“おにぎりで世界を変える”とはなんだろう?」とSNS上で興味喚起できた時、クリックしてもらった先に生まれる感動を指す。この場合、「おにぎりの写真を投稿するだけで、アフリカの子どもたちに給食が5食も届き、自分自身はいつでもどこからでも、無料で参加できる」というところにWOWがあった。感動があると、人は一気に中身に引き込まれていく。

3.自分事化するストーリー

 3つ目が非常に大事なのだが、企業や組織のブランド観、商品やサービスのブランドとマッチし、かつ人が“自分事化”できるストーリーがあることが大切だ。「シンプル&何コレ?」「WOW」で強烈な印象を持たせて興味喚起しても、そこにストーリーがないと人は“自分事化”できず、結果として行動喚起には至らない。

 おにぎりアクションのケースでは、「自分が大切な人のために握る“おにぎり”で、自分の大切な人も、世界の子どもたちもお腹を満たすことができる」という、いわば愛情のおすそわけができる、というストーリーに引き込まれ、共感し、自分事化されるというような行動変容が生まれていった。

 「シンプル&何コレ?」「WOW(感動)」「自分事化するストーリー」の3つのうち、どれか1つが欠けても、特に露出のための予算が限られている場合にはマスに広まるのは難しい。昨今の広告を見ていると、シンプルであるもの、何コレと思わせるものというのはよく見かけるが、ストーリーを外してしまうとブランド価値を高める点において非常に難しくなる。企業や商品のブランド価値を高めるには、やはりストーリーによって伝達をしていくことが非常重要だ。

 3つの原則については、AISASのフレームに基づいて考えてみると以下のような図となる。「シンプル&何コレ」は認知段階で効き、「WOW」によりInterestやSearchに引き込み、そして「ストーリー」があることで、ActとShareに繋げることができる。

 そして「ポジティブに転換する」ということで、行動が繰り返され、連鎖して広まっていくという効果を生み出す事ができる。この「ポジティブへの転換」というのは、ソーシャル・マーケティングを成功させる上で重要なポイントだ。

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マスに広がるのを阻む、陥りがちな3つの要素

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この記事の著者

大宮 千絵(オオミヤ チエ)

株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部
行政事業責任者・ソーシャルビジネスプロデューサー
元 特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International CMO

2007年より日産自動車株式会社にてグローバル・マーケティングリサーチ業務に従事。マーケティングの力を活か...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/10/14 09:00 https://markezine.jp/article/detail/34515

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