店員は作業服を着ないからこそ、お客さんの声を聞くのが当たり前
徳力:アンバサダーの発掘から共創となる製品開発など、非常に高度なアンバサダーマーケティングを実現されています。生産個数や原価率といった面の違いもあるのかもしれませんが、実際、多くのファンマーケティングに取り組むメーカーさんが、やりたいといいながらもできないことのひとつが、このファンとの商品開発なんですね。
林:アンバサダーの方も「自分の商品が売れなかったときにプレッシャーが大きい」とおっしゃる場合はあります。でも製品には絶対の自信もありますし、「私達の場合は一般の方に売れなくても、作業員の人が作業服として買うので大丈夫です」と励ましています。
徳力:それは、おしゃれアウトドア層をターゲットにワークマンプラスを出店し二倍売れたことの逆張りですね(笑)。しかし、お客様の声で商品を作るということはなかなか難しいですよ。社内の抵抗はありませんでしたか。

林:そこがワークマンのカルチャーかもしれませんが、そもそもワークマンの社員はサラリーマンなので、作業服を着ないですよね。着ないものを売っていますから、どこをどうストレッチしたらいいのか、どこが破れやすくなるのか、自分たちではわからないんです。なので、お客様の声を聞くしかありません。今までは店頭にくる職人さんの声を集めていたものが、SNSが出てきてオンラインでも声を聞けるようになった。
そして最近になってアウトドアウェアとして売れるようになったけれど、アウトドアの知見は社内にありません。でも、そうしたときに「わからなかったら、使っている誰かに聞くしかない」という発想が自然にあったと思います。SNSからお客様の声をくみ取るということにも抵抗がありませんでした。SNS担当者は完全に張り付いていい話も不満の声も拾っていますね。
徳力:“オンラインの声はリアルの声とは違うもの”と思っている方も多いのですが。
林:やはり880店舗でこれまで店員にいただいたご意見から商品を作ってきた、という背景は影響していると思います。いまだに作業服では店頭での声のほうが、オンラインよりは大きいですから。
徳力:“お客様の声を聞くのが普通“という社内風土が浸透しているのが非常に印象に残ります。お客様を巻き込みながらアンバサダーマーケティングを非常に成功されている例をうかがえて、今日はほんとうに勉強になりました。ありがとうございました!