初対面の相手とは「Instagramアカウント」の交換から
株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが運営する若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」では、around20(15歳から24歳の男女)を対象に、彼らの価値観や実態を把握する活動を行っている。毎月200名もの若者と直接会って話を聞き、コロナ禍の現在はオンライン上で週に2、3度グループインタビューを行うなどして得た知見を、自社のマーケティングに活用するだけでなく、他社に向けたコンサルティングや勉強会、レポートの作成に役立てている。
SHIBUYA109 lab.の所長を務める長田麻衣氏はまず、around20の若者によるSNSの活用目的として「友人とのコミュニケーション」「友達作り」「情報収集」の3つを挙げた。最近は、初対面の相手とはメールアドレスやLINEといった連絡先より先にInstagramのアカウントを交換するのが若者の間で主流となっているのだという。
また、リアルでの出会いだけでなく、Instagramのフィード投稿を見て自分と似た雰囲気や趣味、いわゆる「バイブス」を感じる相手にDMを送って仲良くなるというケースも珍しくない。実際、長田氏がSHIBUYA109の館内で声をかけた若者のうち、3割程度はSNSを通じて知り合った者同士であるという。そのほか、行きたい場所や欲しいものなどを検索するためにもSNSは使われている。
男女計600名のaround20に「情報の収集場所」を聞いた調査では、男女で傾向に差が見られた。男性がTwitterや検索エンジンなどテキストで情報を収集する傾向が強いのに対し、女性の場合はInstagramの使用率が男性の約3倍と圧倒的に高く、口コミも重視していることがわかる。
参考にするのは“真似しやすい”人
興味深いのは、彼らが参考にしている人だ。around20の若者は、テレビで活躍している芸能人よりも、身近な友人やフォロワーが数千人のインフルエンサーなど、親近感があって真似しやすい人を参考にする傾向が強い。長田氏はその理由として、「自分たちの手が届く範囲で憧れや理想を実現していく、頑張りすぎない若者の指向性」を指摘した。
around20の若者が主に利用しているSNSはTwitter、YouTube、Instagramだが、彼らはそれらの使い分けにも長けている。公式の情報や詳細な内容を知りたい場合はTwitterを使い、テキストで情報を収集する。流行りのメイク方法や洋服の着まわし方法など、ハウツーが知りたい場合は過程のわかりやすいYouTubeが使われる。そしてカフェやおでかけスポット、ファッションアイテムなど、ビジュアルで見たい情報はInstagramで収集する。求める情報に応じてSNSを使い分けることは、若者にとって自然なことだという。
「around20の若者たちが最も意識しているのは、失敗しないことです。限られたお金でやりくりしなければならない彼らは、自分が価値を感じたものにしかお金と時間を使いたくないので、購買行動を起こす前に情報収集を入念に行います。消費のメリハリをつけるのが上手な世代なのです」(長田氏)