コロナ禍における消費者の現状とは
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、様々な社会・経済活動が制限されて5ヵ月以上が経過した。景気悪化も市場の回復も見込めないまま、いま企業の経営者、マーケターを悩ませているのが、「この状況がいつまで続くのか」という問題だ。
2020年9月2日、MarkeZine Day 2020 Autumnに登壇したニッセイ基礎研究所 久我尚子氏は、「コロナ時代を無事生き抜くには、足元の消費者の行動を丁寧に見ていく必要があります。まずはデータから、社会の変化がどのようにあるのか、足元の状況を冷静に分析し、そしてコロナがもたらした変化、影響を詳細に見て、アフターコロナに対する示唆を得なくてはなりません」と説明する。
まず、個人消費はコロナでどのように変わったのか。消費行動で見れば、リーマンショックや東日本大震災よりも深く落ち込んでおり、雇用の悪化も続いている。この状況は、一朝一夕に解決できるものではない。
消費に関しても、旅行やレジャーといった外出が減り、それにともない、ファッションやメイクアップ用品消費の減少が発生した。また感染症であるため、マッサージやエステなどの接触系サービスの需要も減っているという。
一方で増えているのが、巣ごもり消費だ。DIY関連のグッズや、手作りマスク需要にともなう布・糸の支出が増え、手の込んだデザート作りに邁進するなどで小麦粉の消費は増えた。外食支出は減ったが、出前やテイクアウトの需要が増えたほか、肉・チーズなどの食材需要は増えている。そしてレジャー支出は減ったが、ゲームなどのデジタル娯楽は活性化しており、テレワーク需要にともなってPCの購入も増えた。
こうした傾向は、2020年4〜5月をピークに、6月には落ち着いてきた。だが外出型消費の戻り方には温度差があり、静かで飛沫が飛びにくい美術館などは50%まで戻ってきたが、遊園地や映画館への人出はまだ少ない状況だ。旅行も、基本的には車で近場に行って楽しむマイクロツーリズムが主軸となり、パック旅行費や公共交通機関の人出・売上はマイナスが続いている。
企業が生き残る鍵は「消費者の未来への不安」に向き合うこと
消費行動がなかなか変化しない状況には理由がある。まず、直接的な影響があるのは収入・雇用だ。
久我氏は、「6月には給付金があったので実収入は増えましたが、勤務先からの収入を見ると、6月には前年比マイナスとなっています。このため、消費を控えようという動きがありますし、雇用も非正規など弱い立場にある層に雇い止めが生じるなど、マイナス影響が大きくなっている状況です」と説明する。
そのため給付金も、多くは生活費の補填や貯蓄に回されているケースが多い。旅行や投資に回している高年収世帯もあるが、全体的には「これからの収入、生活に対する不安が強い傾向にある」といえる。久我氏は「企業がウィズ・コロナを生き抜くには、この消費者の不安にどう向き合うかがポイントになります」と説明する。
ウイルスへの感染不安を除けば、世界経済や日本経済の悪化を心配する声が多く、過半数の人が経済・収入面の不安を感じているという。この不安を払拭する、安心感を醸成するような商品・サービスの提供が求められているわけだ。