ContentservとMagentoの連携 商品情報をリアルタイムに更新
――PIMをすでに導入している先進企業の事例をいくつかお聞かせください。
菊池 ミズノ様やサカタのタネ様をはじめ、製造業、製造小売業のお客様がContentservを活用し、グローバルマーケティングの強化に取り組んでいます。
ミズノ様におかれては、欧州地域のEコマースサイトでの利用、そして段階的に世界の全チャネルに展開するための商品情報の基盤として導入いただいています。導入以前は、グローバル展開ゆえにさまざまな地域や組織に商品情報やブランドアセットが散在し、情報展開の遅れがグローバルにおけるブランド統一の課題となっていました。導入の上で大きなポイントとなったのは、Eコマースサイトとの連携はもちろん、商品情報を画像などのデジタルアセットと紐付けて管理する「DAM機能」を搭載していること、そしてブラウザから設定できる柔軟なデータフォーマットなどのユーザビリティの高さです。Contentservの導入により、商品情報をグローバルで統合管理することで、世界規模で販売する品目の画像や表現を統一でき、ブランディング強化につながっています。PIMで管理された情報は、グローバルEコマースとリアルタイムに自動連携しています。
多言語や多通貨、マルチサイト対応に優れているMagentoは、さまざまな規制や市場ニーズ、言語がひしめくヨーロッパで高く評価され、多くの企業に利用されています。Contentservは、ドイツ発のPIMプラットフォームであり、PIM先進国のヨーロッパではMagentoとContentservを併用するお客様が多いです。
世界でもっとも歴史ある陶磁器ブランドのビレロイ&ボッホ様はその一例です。フランスで創業し、現在はドイツに本社を置く同社は、世界14生産拠点で製造し、125ヵ国で販売、10のブランドを運営されています。日本では食器ブランドとして認知されていることが多いと思いますが、洗面台、バスタブ、トイレ陶器が世界中のお客様に愛用されています。同社は、早期にグローバルでのデジタル戦略を立て、ContentservとMagentoを導入、異なる販売単位、地域に渡る商品データの「ゴールデンレコード(※)」を確立し、Contentservから自社のグローバルECサイト、外部のECプラットフォームサービスポータル、カタログを含むすべてのチャネルに商品情報を自動連携しています。翻訳管理も統合し、Time to Marketを60%短縮していらっしゃるのが特徴です。
日本での連携事例では、日本の大手産業機器メーカー様が、Contentserv PIMとMagentoの両方の導入を進めていらっしゃいます。このように、連携したContentserv PIMとMagentoを併用し、EC強化に取り組む企業様が増えていくと予想されます。
原 Magentoの特徴のひとつにヘッドレス・コマースがあります。ユーザーがアクセスするフロントとそれを支えるバックエンドシステムが分離している仕組みです。これにより、バックエンドの部分はそのままで、 Contentservからリアルタイムに最新情報を取り込み、Eコマースサイトのみならず、モバイルアプリなどの複数チャネルに商品情報を配信できるのです。
――ContentservとMagentoの連携について詳しくご説明ください。
原 Magentoでは、Eコマースプラットフォームにインストールして機能追加する「エクステンション」と呼ばれるプラグインの仕組みを持っています。iPhoneで必要な機能を、アプリとしてインストールするイメージです。今回の連携で、Contentservと自動連携するエクステンションをリリースしました。これをMagentoにインストールしていただければ、追加で開発を行わずとも、Contentservで管理された情報とMagentoのカタログをマッピングし、データの紐付けを行うことができます。
日本ではそもそもPIMが知られておらず、商品情報をEコマースプラットフォームとAPIで連携したり、Excelのデータをトランスファーしたりといったことが行われています。Contentservとエクステンションによって連携したことで、Magentoではシンプルなデータ連携が行えるようになっているのです。
菊池 ContentservからMagentoに自動連携するデータは、属性、商品カテゴリ、マーケティングアセットをリアルタイムに更新しています。また、クロスセル、アップセルに必要な関連データも新商品が追加されるたびに更新を行っています。Eコマースに掲載する情報は、商品データベースそのままではなく、売るためのコンテンツでなくてはならない。お客様を惹きつけるためには、商品の詳細説明、使用方法、仕様、動画、画像、FAQ、ユーザーレビューまでマーケティングテキストとして「エンリッチ化」する必要があるのです。そして、このように装飾されたデータは、重要なマーケティングリソースになります。Contentservは、いかに商品情報をエンリッチ化し、マーケティングに活かしていくかに重み置いています。
また、Eコマースへの情報掲載に関しては、ひとつの事項について複数のバージョンがあるため最新情報を正確に把握しにくく、チェックと承認に複数人がかかわるため公開までに時間がかかるという課題をお客様からよくうかがいます。Contentserv PIMでは、承認プロセスを最適化するワークフロー機能や、「誰が」「いつ」編集したのかが履歴として保存されるトレーサビリティやデータガバナンス強化のための枠組みを備えています。ユーザーインターフェースについては、容易に業務を行うことができるよう気を配っています。このようにして、最新かつ正確な商品情報、アップセル・クロスセルに関する情報をシームレスにEコマースに提供し、Eコマース担当チームが本来の業務に集中できるよう支援しています。
原 Magentoのカタログ機能を、そのまま商品データベースとして利用することも可能です。しかしContentservには、たとえば商品のライフサイクルの管理機能もあります。そういった細やかな商品情報の管理が行えるのが、PIMの素晴らしいところです。商品情報はあくまでContentservがマスターであり、Magentoは、Eコマースやアプリ、モバイルサイトなどの複数の顧客接点を通して、各デバイスにあわせて商品情報を提供し、Eコマースとして機能するようにしているわけです。
菊池 今は多品種少量生産の時代ですから、商品サイクルが短くなっています。新商品が出るたびに、たとえば人が入力を行うと、間違いが起きないとは言えません。データが散在しているような状況下では、ECサイトに間違った写真が掲載されるといったことも起きてしまいます。Contentservは情報品質をチェックし修正する仕組みも有しているため、このような人為的なミスを防ぐことができます。グローバル展開を行う場合には、地域ごとの規制対応、その他固有要件もかかわってきますが、マルチサイトや多言語、多通貨対応などの機能性に優れているMagentoと同様に、 Contentservでもそれらの要件に対応しています。
※ゴールデンレコード
データ管理者が複数システムおよび情報源から、データの照合と統合、クレンジングを行って作成した、もっとも信頼性の高い一貫性のある最新で完全なデータ。最新の状態に変更・更新されたデータを継続的に照合し、更新前後のデータを常に照合することで、ゴールデンレコードを改善する。