効率化余地が大きいのは上流工程でのデータ活用
それではテレビCMの効率化を目指す上で、どのような視点でデータを活用していけば良いのだろうか。よくある手段の一つは、効果的な時間帯や枠を把握し、スポットCMのバイイングを改善する、つまり出稿枠の選定にデータを活用するというものである。たとえば、ある商品のターゲットと似た価値観を持つ人の視聴データで時間帯・枠を分析し、スポットCMの線引きを改善するなどの活用である。
出稿枠の選定におけるデータ活用はあくまで一例ではあるが、まずはスポットCMの出稿フローがどのようになっているかに立ち返って考えてみたい。図表1は、CM出稿予算の配分も含めた出稿フローの概略である。具体的には、(1)から(4)のプロセスで進めていく。
(1)テレビCMの出稿予算を設定
(2)予算を各エリアに配分
(3)各エリアに配分された予算をさらに各局に配分
(4)各局の予算内で出稿する枠を選定

広告予算の効率化を図る上で重要な視点は、その改善による効率化余地の大きさである。予算が上流(エリア)から下流(枠)に配分されている点を鑑みると、後々の工程にも影響を与えるエリア配分を見直すことでより効果が見込めるのではないだろうか。
出稿枠の選定にデータ活用をしている企業があるという話をしたが、エリア配分においてはどのような意思決定がなされてきたのだろうか?
各社へのヒアリングを通じてわかってきたことだが、CM予算のエリア配分はこれまでの傾向や経験を基にしたものであり、いわば「職人芸」的なものであった。もちろん理想は、傾向や経験などの定性的な情報ではなくデータを根拠とした最適なエリア配分である。