オムニチャネル下の消費者行動
インターネットの普及は企業の行動も大きく変えており、多くの企業は複数のチャネルを併用して消費者に働きかけるオムニチャネル戦略を採用し始めています。このようなオムニチャネルの環境下で、消費者はどのように行動しているのでしょうか。
福岡大学の太宰潮准教授、亜細亜大学の西原彰宏准教授、一橋大学大学院の奥谷孝司氏、横浜国立大学大学院の鶴見裕之教授による論文「オムニチャネル時代における消費者行動の基本理解―コミュニケーションチャネル利用とエンゲージメント行動に焦点を当てて(PDF)」は、オムニチャネルにおける消費者行動と顧客指標の関係を多面的に検討しています。
太宰准教授らは、データの分析を通じて、利用チャネルの多い消費者は他者への推奨意向が高いことや、ショールーミングやウェブルーミングを行う消費者は、実店舗やECサイトを利用する比率が高いことなど、利用実態と顧客指標との関係を明らかにしています。DXにより加速すると考えられるオムニチャネル下の消費者行動を考える一助になる論文です。

店舗内の逐次選択
店舗内の消費者は、買物カゴの中で、健康や罪悪感のバランスを取ろうとする傾向があることがいくつかの研究で指摘されています。たとえば、健康に良くないジャンクフードをカゴに入れると、健康バランスや罪悪感から、健康食品をかごに追加するという行動です。私たちは、来店前の計画通りに購入するだけではなく、このように逐次的に選択を行っていることが多々あります。
明治学院大学の赤松直樹准教授と亜細亜大学の福田怜生専任講師による論文「消費者の逐次選択における目標コンフリクトの影響-各選択の関連性に着目した分析(PDF)」は、このような店舗内での逐次選択に着目し、先行する製品選択が後続の製品選択に与える影響は、消費者の健康意識と選択間の関連性により変化することを実験で明らかにしています。この研究は、情報技術の影響を直接取りあげたものではありませんが、小売企業がアプリやサイネージなどのマーケティング・ツールの活用を考えるうえで、大変参考になる研究です。
以上、ご紹介した5本の論文は、変わりゆく買物を捉え、これからの戦略を考えていく上で、重要なヒントを与えてくれます。ぜひご一読をお勧めします。